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2009/10/24

『日本幻想作家事典』

 2年越しの大仕事であった『日本幻想作家事典』[Amazon]がようやく完成した。来週明けには書店に並んでいるはずだと思う。私が担当したのは付録の「怪奇幻想映像小史」のうち、「怪奇・伝奇映画、ドラマ」と「特撮映画、ドラマ」のパートである。幻想文学読者向けにこれらの映像ジャンルの概要を提示するという趣旨で、事典形式ではなく通読を前提とした記述になっている。また、特撮物はSFに属する作品が多いのだが、それらも「どのような幻想が描かれているか」に主軸を置いて論じている。SFファンや特撮ファンが読むと、異和感を抱くところもあるかも知れない。

 扱う範囲が非常に広大なために、膨大な時間を調査と未見の作品の消化に費やすことになった。そのために入稿が大幅に遅れてしまい、付録のまとめ役の石堂藍氏にはずいぶんとご心配を掛けてしまった。それでもまだ万全とはいいがたく、とうとう見ることができなかった作品について「幻想映画」パート担当の堀部利之氏に一部執筆協力をいただいたり、入稿後に無理をいって書き改めた箇所もある。今後もまた誤りや新たな事実が判明した場合には、随時このブログでフォローしていこうと考えている。

 今回、何よりも痛感したのは、一人の力には限界があるということだった。もともと私の知識や嗜好はかなり偏りがあり、参考にさせていただいた各種文献やウェブサイトはもちろんのこと、大学時代の後輩たちを始めとした知人・友人たちの助言や資料提供がなければ、この仕事はとてもやり遂げることはできなかっただろう。特に、初の国産テレビ映画である「ぽんぽこ物語」で弟狸のぽん吉を演じられた栗原真一氏が、本書のウェブ作業室をご覧になってわざわざ資料を送ってくださったのは、嬉しい驚きであった。

 にもかかわらず、本書が完成しいよいよ取次へ搬入という時期に、たいへんな事実が判明した。何と、編集作業上の手違いで私の原稿のうち参考文献・サイトと謝辞が、丸ごと脱落してしまっていたのである。この種の研究作業は先行する諸成果の蓄積があってこそ可能なのであり、それらに対する礼を欠くとはまったく恥ずかしい過ちというほかない。残念ながら初刷分の訂正はもはや不可能なので、アトリエOCTAの事典専用ページに該当箇所を掲載していただいたが、このエントリーの末尾にもあわせて掲載しておく。

 関係各位には、まことに失礼をいたしました。深くお詫び申し上げます。


参考文献・サイト

【文献】

『キネマ旬報別冊 日本映画作品大鑑』全7巻、キネマ旬報社、一九六〇~六一

『日本特撮・幻想映画全集』、朝日ソノラマ、二〇〇五

『全怪獣怪人』上・下、勁文社、一九九〇

『テレビドラマ全史 1953~1994』、東京ニュース通信社、一九九四

泉速之『銀幕の百怪 本朝怪奇映画大概』、青土社、二〇〇〇

横山泰子『江戸東京の怪談文化の成立と変遷 一九世紀を中心に』、風間書房、一九九七

小中千昭『ホラー映画の魅力 ファンダメンタル・ホラー宣言』岩波アクティブ新書(岩波書店)、二〇〇三

雑誌『宇宙船』、朝日ソノラマ、一九八〇~二〇〇五・ホビージャパン、二〇〇八~

ソノラマMOOK『宇宙船 YEAR BOOK』、朝日ソノラマ、一九九七~二〇〇七

猫山れーめ・編、著『JESFTV』第一号、日本初期SF映像顕影会(私家本)、二〇〇七

那智史郎『戦慄と冒険の映画王国 東映娯楽版コレクション』、ワイズ出版、一九九九

那智史郎『大映戦慄篇 昭和二十年代探偵スリラー映画』、ワイズ出版、二〇〇〇

岩佐陽一・編「シルバー仮面・アイアンキング・レッドバロン大全 宣弘社ヒーローの世界」、双葉社、二〇〇一

平山亨『仮面ライダー名人列伝 子供番組に奇蹟を生んだ男たち』、風塵社、一九九八

平山亨『東映ヒーロー名人列伝』、風塵社、一九九九

【サイト】

キネマ旬報DB/Walkerplus.com(株式会社角川クロスメディア)
http://www.walkerplus.com/movie/kinejun/

allcinema ONLINE(株式会社スティングレイ)
http://www.allcinema.net/

日本映画データベース
http://www.jmdb.ne.jp/

テレビドラマデータベース
http://www.tvdrama-db.com/

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』(ウィキメディア財団)
http://ja.wikipedia.org/wiki/


 とりわけ戦前の怪談映画、怪奇映画の概要については参考文献のうち『銀幕の百怪 本朝怪奇映画大概』に依るところが多く、著者泉速之氏には格別の謝意を表する。また、テレビドラマ「ぽんぽこ物語」について、主役の子狸姉弟のうち弟のぽん吉を演じられた栗原真一氏より資料をご提供いただいた。ご厚意に深く感謝する次第である。



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