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2007/03/18

Annotated Checklist of Speculative Fiction

 ネットで調べものをしていて、アメリカのホラー作家/研究家ドン・ダマッサがホームページ"Critical Mass"で、作家名から検索する書誌データベース"Annotated Checklist of Speculative Fiction"を無償公開しているのをたまたま見つけた。ジャンルとしては「SF」「ファンタジー」「ホラー」に区分けしており、「ホラー小説には『羊たちの沈黙』のような非超自然ホラーは含んでいない」と断り書きがある。たとえば同じ古典ゴシック小説でも『マンク』はホラーだが『ヴァテック』はファンタジーというように分類されているのだが、複数のジャンルにまたがって掲載されている小説もあるようだ。一応、『オトラント城』以降のすべての小説を収録しようという方針らしいが、無名の古典ゴシック小説などはさすがにきびしくて、それなりに網羅できているのは19世紀末以降のようだ。それでもなお私が気づくような未掲載の作品があるので全体としては遺漏はかなりあると思われるけれど、オンラインデータベースの強みで随時アップデートしてくれている。

 類似の書誌データベースとしては、"Fantastic Fiction"があるが、年代の古い作品については、ダマッサのデータベースの方が"Fantastic Fiction"よりも多く網羅しているようである。また、"Annotated"とあるだけあってすべての本にごく短い内容紹介が付されているのが嬉しい。たとえば創元推理文庫より近々邦訳が出る予定のジャック・ウィリアムスンのホラー長篇『エデンの黒い牙』("Darker Than You Think",1940)だと、こんな感じである。

"Werewolves, witches, and other supposedly supernatural beings are explained as part of a non-human species which was nearly wiped out by homo sapiens in the distant past. Now they are re-emerging, though still hidden among normal humans, and there is but a single weapon which might prevent their seizing control of the world."


 すべてに内容紹介といっても短篇集については"Collection of unrelated stories"で済ませているし、未読のものは正直に"Not seen"と書いているのでぜんぜん不完全なのだけど、あるのとないのでは大違い。すなおに感謝すべきだろう。

 データがシンプルな構成のhtmlファイルなので、フルブラウザを搭載してる携帯電話なら古本漁りの最中にさっと参照することも可能だろう。SF、ファンタジー、ホラーぜんぶのデータをダウンロードしても30MB強だから、PDAを持っていればメモリーカードにコピーして電波の届かないところでも見られる。携帯電話については私はフルブラウザは入れていないので試していないが、PDAでの運用はふだん手帳として愛用しているヒューレット・パッカードのWindowsCE機iPAQ Pocket PC h1937で試してみた。標準ブラウザのPocket Internet Explorerの読み込み速度が遅いのとページ内検索機能がないのが難点だが、読み込み後の動作速度は申し分なく、十分実用に耐えるようだ。より高機能なブラウザをインストールすれば、もっと快適に使えるだろう。ポケットに収まるSF・ファンタジー・ホラーのリファレンス本が無料で手に入ってしまった! ドン・ダマッサにはいくら感謝してもし足りない気持ちだ。

 こうしたシンプルでオープンな形式の電子データのもう一つの利点は、データの検索・抽出・加工が紙のデータとは比較にならないほど容易なことで、たとえば20世紀前半に出ているホラー長篇のリストなんていうのが、数時間もあれば作れてしまう。で、そこからどういうことが判るかというと──これは後日別項にて。

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