購書備忘録2005その48『泪坂』
bk1より下記3冊が届く。
倉阪鬼一郎『泪坂』(光文社文庫)[bk1][Amazon]
これはさっそく読んだ。初期を代表する短篇『便所男』の汲み取り便所の穴が大宇宙の虚無と繋がるごとく、特殊小説家倉阪鬼一郎の作品世界は狭くて広く、広くて狭い。本書は鬼畜なホラーやミステリを得意とする倉阪が、江戸指物の職人を主人公に初めて親子の情愛を描く人情話に挑んだという長篇で、確かにその看板に偽りはないのだけど、やはり倉阪流の怪味溢れる小説でもあった。ありきたりの人情話と信じて手に取った読者は、さぞかし面食らうことだろう。だが、一般に人情話で泣こうというような層は新たな発見よりも確認に喜びを見出すものだから、自分がはめられた狭い穴の奥の広がりに気づけるような読者が果たしてどれぐらいいるかどうか?
東雅夫編『妖怪文芸 巻之2 響き交わす鬼』(小学館文庫)[bk1][Amazon]
妖怪文芸アンソロジー・シリーズの第2弾。今回のテーマは鬼なのだが、標題で判るとおり『仮面ライダー響鬼』へのリスペクトにもなっているのだそうだ。方々で評判になっているこの番組、あいにく私は一度も見ていない。実はライダーや戦隊系の特撮物は何もかも外連で押し通してしまうドラマ作りが苦手で、妻や子供が見たがらない限り、新作を積極的に追うことまでしていないのである。なお、本書は『仮面ライダー響鬼』を見ていなくても楽しめる内容だそうだ。
ロード・ダンセイニ『時と神々の物語』(河出文庫)[bk1][Amazon]
河出文庫のダンセイニ作品集第3弾。『ペガーナの神々』とその続編『時と神々の物語』、『三半球物語』の3つの短篇集と、生前には単行本未収録だった短篇11篇を収録している。560ページもの分量のわりに1000円を切る廉価で、これはお買い得だろう。
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