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2005/09/05

購書備忘録2005その47 メルヘン文庫再び&『妖怪大戦争』

 親子5人で映画『妖怪大戦争』を見るために阿倍野へ出掛けた。なかなか好評であるとは聞いていたが、劇場に着いてチケットを買おうとすると次の回がもう満席。2時間ほど暇を潰さなくてはならなくなった。妻と子供たちはマンガ喫茶に行きたいというので、iモードで検索して見つけた手近の店に彼らを送り届け、私だけ天王寺駅周辺の古書店を廻ることにした。3軒廻って収穫は下記の7冊。

チャールズ・ディケンズ『炉端のこおろぎ』(1980,東洋文化社)
クレメンス・ブレンターノ『ミルテの精』(1980,東洋文化社)
ルートヴィヒ・ティーク『金髪のエックベルト』(1981,東洋文化社)
 先月メルヘン文庫を買った店に行ってみたら、まだたくさん残っていたので、またも創作ばかり3冊を購入した。有名な作家ばかりだし、これでしか読めないわけでもないのだろうが、ファンタジー系の書誌には疎いのでよく判らない。とにかく私は持っていないので買った。ひょっとして、創作よりも民話系の本の方が珍しいものがあったりするのかも知れないけど、こちらはファンタジー以上に疎いのでますます判らない。

K・H・シェール『オロスの男』(1986,ハヤカワ文庫SF)
 ドイツ産のSF長篇。冥王星探検隊が、憑依能力を持つゼラチン状のエイリアンに襲われて──というお話とのこと。この著者の作品は、小学生のころに父から借りた<ペリー・ローダン>シリーズでいくつか読んだことがあるはずだけど、どれがどれやら思い出せない。

ウィルキー・コリンズ『白衣の女』上・中・下(1996,岩波文庫)
 コリンズの怪奇小説の邦訳は一通り読んでいるのだけど、ミステリの源流の一つして名高いこの超有名作は、恥ずかしながら未読だったのである。我ながら偏っているとつくづく思う。

 さて、『妖怪大戦争』。タイトルこそ往年の大映特撮映画から借りているものの、まったくの別物といっていい映画であった。旧作は人間の主人公格もいるものの、どちらかというと視点を日本の妖怪たちに置いており、彼らが日本に襲来するバビロニアの悪霊ダイモンを斥ける戦いを描いていた。ところが今回は『稲生物怪録』を思わせる人間の少年の通過儀礼が主軸になっていて、妖怪と交流できる少年が善玉妖怪の協力を得て、加藤保憲(あの『帝都物語』の加藤である)が率いる悪玉妖怪軍団の目論見を打ち砕くという人間主体のストーリー。三池崇史監督の演出は全体に少々ベタではあるが、その反面怖がらせるところも笑わせるところも泣かせるところもきっちり押さえていて、楽しめる映画に仕上がっている。

 今どきの映画らしく妖怪の特撮はそれなりによく出来ており、一昔前ならアニメではないと不可能だったようなアクションも続出したりして飽きさせない。そしてそれ以上に、特撮ばかりに頼るのではなく、役者の演技力で妖怪らしさを出そうと努力しているのが好もしい。近藤正臣演じる猩猩の飄々とした魅力。栗山千明のアギと高橋真唯の川姫の妖艶さ。トヨエツの加藤保憲も怪人嶋田久作と較べてしまうとつらいけど、よくやっていたと思う。しかし、一番妖怪じみていたのは、主人公を演じた神木隆之介の美少年ぶりだったかも。

 善玉妖怪軍団が一致団結というのではなくて、お祭り騒ぎのうちに何となく結集されてしまうというのも可笑しくてよい。ただ、善玉も悪玉も妖怪の出自は結局あまり変わらないようなものなので、悪玉妖怪たちの人間に対する復讐の是非を巡ってもっと激しい葛藤があって然るべきではないのかとも思った。あまり難しいことを考えずに楽しむべき映画なのだろうが、例えば昭和のアニメ版ゲゲゲの鬼太郎や初期の円谷特撮ドラマなんかは、そういうところから目を逸らさないでいながら、きっちりエンターテインメントになっていたんだけどなあ。

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