購書備忘録2005その46『エトリックの羊飼い、或いは、羊飼いのレトリック
bk1より、下記5冊が届く。
高橋和久『エトリックの羊飼い、或いは、羊飼いのレトリック』(研究社)[bk1][Amazon]
何と、ゴシック小説の中でも飛び抜けた異色作として知られる『悪の誘惑』の著者ジェイムズ・ホッグの評伝である。発行は昨年の8月で、さこんな本が出ていたとはちっとも気づかなかった。著者は『悪の誘惑』の訳者なのに、帯にも版元の紹介ページにも、ぜんぜん『悪の誘惑』に触れていないのはちょっと不思議。ホッグは怪奇幻想専門の作家というわけではないので、基本的に「エトリックの羊飼い」でピンとくるような読者向けに書かれている本なのだろうけど。
カービー・マッコーリー編『闇の展覧会 敵』(ハヤカワ文庫NV)[bk1][Amazon]
1980年代のモダンホラー・ブームの代表的書き下ろしアンソロジーが、装いも新たに復刊された。旧版は上下2巻だったのを全3巻とし、さらに各巻に新たに解説を追加したものの第1巻である。手に取ってみて、収録作数に比して予想外に本が厚いなと思ったら、旧版よりかなり活字が大きくなっていた。高齢化社会対応版? 全3巻に改編したため作品の配列が旧版とは異なっているのと併せて少々違和感があるが、新たな読者にはまあ関係のない話ではある。
香川雅信『江戸の妖怪革命』(河出書房新社)[bk1][Amazon]
江戸時代に、それまでは生きた伝承であった妖怪が虚構と判っていて楽しむものへと生まれ変わっていった過程から、現代に通ずる妖怪観の成立を論じた研究書。実在を信じて怯えているのと、はじめからフィクションとして了解して楽しんでいるのとでは、認識の仕方が違うだろうと言うのである。いわゆる未確認動物や宇宙人などに顕著なように、エンターテインメントを通じて形成されたキャラクターが実見談にフィードバックするケースもあるので、そう綺麗に線引きできるものだろうかとも思うけれど、ともかく一度はこのような分別作業が必要なことは間違いない。この本は、妖怪研究の一つのエポックメイカーとなるかも知れない。
フレデリック・E・スミス『633爆撃隊』(光文社NF文庫)[bk1][Amazon]
木製の機体を用いて戦闘機を上回る高速を誇った英国空軍の双発爆撃機<モスキート>部隊の奮戦を描いた小説。史実に基づかないフィクションながら映画化もされていて[Amazon]、むしろそちらで有名かも知れない。かく言う私も、小学生のころにテレビで映画版を見てモスキートの特異なキャラクターに痺れ、翌週モノグラム社の1/48模型を買い求めて作った覚えがある。
訳者は軍事評論家の岡部いさく。かつて徳間文庫からも、野村芳夫による邦訳が出ている(『633爆撃中隊』)。本書は2000年の発行で、あとがきで訳者は続編の邦訳を予告しているけれど、実現していないようだ。
坂本明『世界の空母 カンパニアからロナルド・レーガン、未来空母まで』(文林堂)[bk1][Amazon]
航空母艦という艦種の誕生以来の歴史と、現代の航空母艦のメカニズムや運用法を図解で紹介しているムック本。著者が1993年にグリーンアロー出版から出していた『大図解 世界の空母』の改訂版とのこと。
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