購書備忘録2005その44『ニューゲイト・ノヴェル ある犯罪小説群』
大学時代のサークルの仲間と梅田で飲み会があったので、早めに出掛けてジュンク堂書店梅田店に寄る。いろいろと気になる本があったのだけど、給料日前だし飲み会の資金をキープしておく必要もあるしで、下記2冊だけ購入。
北條文緒『ニューゲイト・ノヴェル ある犯罪小説群』(研究社)[bk1][Amazon]
ニューゲイト・ノヴェルとは、1830~40年代の英国で人気を博した犯罪者を主人公にしている小説のことであり、当時ロンドンにあった重犯罪者の収監施設ニューゲイト監獄にちなんで、このように呼ばれた。今日の犯罪小説の先駆のようなものだが、より厳密に文学史上に位置づけるなら18世紀末から19世紀はじめのゴシック・ロマンスと、19世紀後半のセンセーション・ノヴェルを繋ぐジャンルと言える。本書はニューゲイト・ノヴェルを本格的に論じた文献としては、本邦でほとんど唯一のものとのことで、ゴシック・ロマンスのウィリアム・ゴドウィン『ケイレブ・ウィリアムズ』から語り起こしてブルワー・リットンやディケンズ、エインズワースらの諸作とサッカレイによる批判を軸に、ニューゲイト・ノヴェルの誕生から終焉までを論じている。
本書の発行は何と1981年で、こんな古い本が平然と棚に並んでいるのがジュンク堂の凄いところ。もちろん絶版にしなかった版元も立派だけど、手にとって中身を確かめることができたからこそ私は買ったのだから、ジュンク堂のおかげなのである。いやほんとに、ネットの書店でばかり買い物してないで、たまにはリアルの書店を覗かないといけませんなあ。
ピーター・トレメイン『アイルランド幻想 ゴシック・ホラー傑作集』(光文社文庫)[bk1][Amazon]
アイルランドの伝承を題材にしたホラー11篇を収録した短篇集。著者は高名なケルト学者の別名義とのことで、本書収録作はどちらかというと現代風のどぎついホラーではなく古き良き時代の怪奇小説に近いものらしい。光文社文庫でこのような渋めの怪奇小説が出るとは、ちょっと意外な気がする。それにしても、ケルトなのになぜゴシック・ホラー? ケルティック・ホラーとした方が、字面も格好いいと思うけどなあ。実際読めば、ゴシック風になっているのだろうか。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント