購書備忘録2005その43『第82空挺師団の日本人少尉』
今日から本業は5日間お盆休み。bk1から、下記7冊が届く。
飯柴智亮『第82空挺師団の日本人少尉 アフガン最前線』(並木書房)[bk1][Amazon]
これはすぐに読みました。アメリカの市民権を獲得して空挺師団に入隊し、少尉にまでなった日本人青年の手記。第82空挺師団というと、第二次世界大戦のノルマンディー上陸作戦やマーケット・ガーデン作戦でも活躍したことで知られ、世界のどこかで紛争が起きたらまっさきに派遣される精鋭部隊である。いや、こういう人がいたとは、ちっとも知らなかった。
そもそものきっかけが「ランボーに憧れて」というのはちょっと困りものだけど、アメリカが自由と民主主義のために戦っていると信じ、
「そんなアメリカに心から賛同したからこそ、自分は米軍に入隊し、いまアメリカ人になったのだ。(中略)小さな誤りはあっても、アメリカは間違いなく大義のために戦っている。自分の決断は間違っていない」
とまで言い切る著者の姿勢については、賛否はともかく我々もその意味をよく考えてみる必要があるだろう。非常識な極論のように聞こえるが、現在ますます進みつつある自衛隊の米軍に対する協力だって、外から見れば彼の思想と似たり寄ったりなのだから。
実戦の記録としては拠点防御や輸送部隊の護衛といった任務ばかりで少々地味めではあるものの、米軍の採用以来実に70年を越える古参兵器ブローニングM2重機関銃(本書では「キャリバー50重機関銃」と呼称。「トリビアの泉」で日本刀を叩き折っていた、あの機関銃である。装甲車や戦闘機を破壊できる銃なのだから、当たり前の結果なのだが)が、いまなお歩兵部隊用の銃器としては抜群の威力を誇り、兵士たちに重宝されているのが興味深かった。
光プロダクション編『ジャイアントロボ 資料編』(講談社)[bk1][Amazon]
『ジャイアントロボ』原作マンガ初単行本化の第3弾で最終巻。正伝が『週刊少年サンデー』に連載されたのに対し、各種月刊誌に連載され外伝的な位置づけになる7篇に、各種エッセイやインタビュー、実写テレビ版やOVA版の紹介等を併録したもの。実写テレビ版ロボの特攻隊を思わせる最期について、プロデューサーの平山亨が、自らの戦中派ならではのこだわりであったが、当時たいへんショックを受けたという女性の話を聞いて、今では反省していると語っている。うん、あれは感動っていうよりも悲しかったですよ。子供には、いかに問題を解決し自らも生き延びるかをという基本を、まず教えるべきはないだろうか。赤影さんを見習ってください。
イサベル・アジェンデ『神と野獣の都』(扶桑社ミステリー文庫) [bk1][Amazon]
15歳の少年が作家の祖母に連れられて、アマゾンの奥地に棲む謎の獣人を調査する探検隊に加わるという、幻想的な冒険小説とのこと。著者は『精霊たちの家』などの魔術的リアリズムの作風で知られるラテンアメリカ作家だが、本書の売り出し方はまったくのエンターテインメントであるかのようである。もちろん、どっちでも楽しめれば構わないのだが、ちょっと意外だったので。
東雅夫編『妖怪文芸 巻之1 モノノケ大合戦』(小学館文庫)[bk1][Amazon]
妖怪を題材にしている古今の文芸を集めたアンソロジー全3巻の第1巻である。収録作家は谷崎潤一郎や石川淳、稲垣足穂、小田仁二郎等々、そうそうたる顔ぶれ。東雅夫による妖怪アンソロジーとしては、『書物の王国18 妖怪』(国書刊行会)[bk1][Amazon]と『怪猫鬼談』(人類文化社)[bk1][Amazon]に続く3冊目になるのだろうか。親しまれている題材のわりに類書がほとんどないようなのは、例えば幽霊などと較べると、妖怪には愛嬌がありすぎるせいではないかと思う。本書も、カバーや本文に愛くるしい妖怪のイラストが散りばめられていて楽しいのだけど、あまりにも楽しげなので、見た目だけでお笑いっぽく感じてしまう向きもあるのでないだろうかと、よけいな心配をしてしまう。
柴田宵曲『妖異博物館』(ちくま文庫)[bk1][Amazon]
柴田宵曲『妖異博物館 続』(ちくま文庫)[bk1][Amazon]
江戸時代や中国の古典籍などから不思議な話、怪しい話を収集して語り直した怪談随筆の名作の文庫化。昭和30年代に出版された原著は古書店の目録でもよく見掛けるのだけど、相場の方も名作に相応しいものなので、私はなかなか手を出せないでいた。この2冊で2100円なら安いものである。
下楠昌哉『妖精のアイルランド 「取り替え子」の文学史』(平凡社新書) [bk1][Amazon]
妖精による「取り替え子」の伝承を鍵に、19世紀後半から20世紀始めまでのアイルランド文学(イェイツからブラム・ストーカー、オスカー・ワイルド、ラフカディオ・ハーン、ジェイムズ・ジョイスまで)の精神的背景を読み解く研究書。著者は、ボブ・カラン『アイリッシュ・ヴァンパイア』(早川書房) [bk1][Amazon]の訳者でもある。
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