購書備忘録2005その41 真理 MARI
Amazonより、下記3冊が届く。
加門七海『真理 MARI』(光文社文庫)[bk1][Amazon]
中篇に近い長さの「書き下ろし長篇ホラー」。なので、これはすぐに読んだ。怪異を説明することは最小限に抑えて体験者の心理を描写することに重きを置いていて、加門七海の作品としては、昨年同じ光文社文庫から出た『203号室』[bk1][Amazon]と同傾向と言えるが、徹底度は本書の方がはるかに上。
中学までの同窓生にたまたま再会した30代の独身OLが、同窓生の妻からあらぬ疑いを掛けられ、執拗な嫌がらせを受ける──と、出だしはサイコ・スリラー風だが、嫌がらせがどんどんエスカレートするうちに自然と超自然の境まで越えてしまってホラーになっていく。ところが、これまで超常現象などとは一切無縁に暮らしてきた主人公は、なかなか怪異を怪異と認めようとはしない。自分が狂っているのか? それとも世界が狂っているのか? こんなバカな話をしても誰にも信じてもらえるはずがない……とほとんど終盤まで独り悩み続けるのである。あり得ないことを見てしまう怖さ、あり得ないことを見てしまったために孤立していく怖さをこれほど執拗に追求しているホラーも珍しく、読み応えがあった。
有川浩『海の底』(メディアワークス)[bk1][Amazon]
横須賀に巨大ザリガニの群れが!という、まるでB級SF映画のようなシチュエーションの長篇怪獣小説。著者は『空の中』[bk1][Amazon]という空の怪獣小説も書いていて、作風としてはリアル派のシミュレーション小説っぽいそうだけど。次回作は『地の底』というタイトルで、巨大ミミズとか巨大モグラの話を大まじめに書いてくれたりするのだろうか。
『小説すばる 8月号』(集英社)[Amazon]
《夏が凍る! ホラー&幻想の短編大特集》とのことで購入。先月出ていたのだけど、ふだん雑誌類を買うのに利用している近所でいちばん大きな書店が改装中なので、今まで気づかなかった。
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