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2005/06/26

購書備忘録2005その36 ウィルキー・コリンズ読本

 東京に住んでいる大学時代のサークルの後輩が所用で帰省してきたので、もう1人川西に住む後輩を呼び出し、梅田で落ち合って方々散策した。まず、かっぱ横町の古書店街で、1冊。

Andrew Gasson "Wilkie Collins:An Illustrated Guide"(1998,Oxford University Press)
 書名のとおり、図版を満載したウィルキー・コリンズ読本である。大判のハードカバーで200ページ弱、短文の項目をアルファベット順に並べた事典形式になっているので、私のように英語が苦手な者にも読みやすい。本の状態もまずまずで値段も手頃だったし、これはなかなか良い拾いものだったかも。

続いて、ジュンク堂書店で新刊雑誌を2冊。

『ミステリマガジン』8月号(早川書房)
 <新旧異色作家競演>特集。特集解説で尾之上浩司氏も書いているとおり、「異色作家短篇」という言葉は、早川書房の叢書<異色作家短篇集>を起源とするもので、英米にはそういう言葉も概念もない。とはいえ、この種の作家・作品を言い表すのにはまさにぴったりなので、日本では広く定着しているのである。では、なぜあちらでは、このような便利なジャンル分けを使わないのだろう? まあ、身も蓋もない言い方をすれば「早川書房が無かったから」で済む話なのだが、ひょっとしたらその背景には、短篇小説というものについての彼我の意識の違いがあるのではないだろうか。
 文学史的には英語圏の短篇short storyと長篇novelは、長さの長短のみならず内容も違うジャンルであって、かつては写実を旨とするnovelでは日常を逸脱した奇怪な題材を扱うことは原則として認められず、short storyではそのような制限がなかった。そのせいもあって、怪奇幻想小説は短篇を主流に発展してきたのである。古い作家ではレ・ファニュ、新しいところではエリザベス・ボウエンやL・P・ハートリーなど(って、ぜんぜん新しくないな……)が典型的な例で、彼らは怪奇短篇の創作に情熱を注ぐ一方で、長篇では写実に徹し続けた。つまり逆に言うと、novelならぬshort storyにおいては「異色」はまったく異色ではないとも言えるわけで、だからあえて別扱いする発想が出てこないのではないかと──これはぜんぜん裏を取っていない思いつきの推論に過ぎないので、悪しからず。

『SFマガジン』8月号
 こちらは映画に合わせた<宇宙戦争>特集。ただし、『スター・ウォーズ』その他と抱き合わせになっている。『スター・ウォーズ』に関心のない私としては、『宇宙戦争』のみで特集を組んで欲しかったところだが、まあ少数意見でしょうな。それと、どこかで1つぐらいは1953年版の『宇宙戦争』をクローズアップしてくれる雑誌やムックが出ないかと期待しているのだけど、やっぱり難しいだろうか。『宇宙船』が生き残っていれば、可能性があったかもなあ。

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