購書備忘録2005その19『最後の審判の巨匠』
bk1より、レオ・ペルッツ『最後の審判の巨匠』、廣野由美子『批評理論入門』、陰山琢磨『蒼穹の槍』、横山光輝『原作完全版ジャイアントロボ(下)』が届く。
レオ・ペルッツ『最後の審判の巨匠』(晶文社)[bk1][Amazon]
オーストラリアの作家による、伝説的な幻想ミステリとのこと。訳者は幻想アンテナなどネット上で精力的に活動されているpuhipuhiこと垂野創一郎氏で、本書をさらに楽しむための情報サイト「Bibliotheca Puhipuhi」も開設されており、ネット時代ならではの試みとして注目される。当然、本書の巻末にも詳細な解説を付されているのだけど、どうもネタバレしているところがあるらしい感じなので、本編にまだ手を付けていない私は慌てて読むのを止めた。それでも、ラヴクラフトとの関連に言及した部分は、否応なく目に焼き付いてしまったのだが──。
実のところ、ラヴクラフトは1926年の始めには「文学における超自然」の1~4章を書き上げていたというから、冒頭の恐怖論が1930年の『最後の審判の巨匠』の英訳に影響を受けているというのは、ちょっとあり得ない。果たしてそれ以前に原書を読んでいたかどうかだが、それほど感銘を受けていたのなら、饒舌な手紙魔の彼はどこかに書き残しているのではないだろうか? 私はアーカムハウス版の書簡選集も読んでいないので、何とも言えないのだけど。
廣野由美子『批評理論入門』(中公新書)[bk1][Amazon]
副題が「『フランケンシュタイン』解剖講義」となっていて、メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』を俎上に載せ、様々な批評理論の立場から論じてみることで、「小説とは何か?」に迫った本とのこと。少々堅苦しい雰囲気だが広範な話題を扱っているようで、書名通りの批評理論の入門書としても、『フランケンシュタイン』を読み込む手引きとしても、なかなか有用な本かも知れない。
陰山琢磨『蒼穹の槍』(カッパ・ノベルス)[bk1][Amazon]
2015年の近未来を舞台に、麻薬マフィアによる宇宙空間からの破壊テロを描いたSF小説。一応、どういうテロかというのが一つの焦点らしいが、「全長二〇〇センチ、最大径二〇センチ、重量七〇〇キロ、構造タングステン・カーバイド、表面硬化処理、耐熱鏡面加工」の<槍>というと、たぶんアレなんでしょうなあ。
著者は以前、朝日ソノラマ文庫で『センチュリオン急襲作戦』という一風変わったロボットアクション小説を書いている。今では絶版で、私も古書店で見つけたものを最近になって読んだのだけど、なかなかおもしろかった。このセンチュリオン、ロボットものにありがちな万能兵器ではなく「分隊支援火力プラットホーム」だというのである。荒削りなところもある小説だが、このセンチュリオンの設定を聞いてビビッと来てしまう方ならきっと楽しめるはずなので、ぜひとも探し出して読んでみて欲しい。
横山光輝『原作完全版ジャイアントロボ(下)』(講談社)[bk1][Amazon]
これは即日読了した。おもしろかったけど、上巻と較べるとちょっと勢いが落ちるような……。特にGR2との決着は、もっとしつこく引っ張って欲しかったなあ。もう1冊、補巻が出るらしい。
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