購書備忘録2005その7
持病の薬をもらうためにかかりつけの総合病院へ。読みかけの倉阪鬼一郎『冥い天使のための音楽』(原書房)[bk1][Amazon]を持参し、待ち時間中に読了した。「旋律」と「戦慄」を掛けているかのような帯の惹句に、例によって笑いと狂気が入り交じるアクロバティックな仕掛け満載かと思い込んでいたら、謎解きが主体ではあるものの、意外や雰囲気を重視した味わいだった。本格ミステリは読み付けないので本気で判らないのだが、登場人物と読者の情報量に意図的に差をつけているのは、フェアとされる範疇なのだろうか? ホラー的には、こういうのもありだと思うんですが。
帰りに寄った書店で、『PANZER』2月号と『SFマガジン』3月号を買った。
戦車雑誌『PANZER』(アルゴノート社)は、記事によって買ったり買わなかったりする。今回のお目当ては特集「MBT70/Kpz.70の再評価」。MBT70/Kpz.70は、1960年代にアメリカと西独が共同開発しようとした戦車である。アメリカ側の呼称がMBT70で、西独はKpz.70。ミサイルランチャー兼用の主砲を始め、自動装填装置や油気圧サスペンション、操縦席が砲塔内にある特異な乗員配置等々、当時の最新技術を贅沢に盛り込んだ戦車だったが、両国の思惑がすれ違って仕様が統一できなかった上に、金は嵩むわ性能は安定しないわで、70年代初めには計画が頓挫してしまった。外見はまさしくパットン・シリーズとM1エイブラムズを繋ぐミッシング・リンクで面白いのだが、模型化とかはまずあり得ないだろうなあ。
ちなみに、平凡社の小項目大百科『マイペディア』の戦車の項には、いまだに「主兵装もミサイル化の傾向にある」などと書いてあるが、それはMBT70/Kpz.70のころの話であって、30年ほど前にミサイルは見放されているのである。こういう記述が放置されているのだから、『マイペディア』の軍事関連の項目はあてにしない方がいいだろう。
『SFマガジン』(早川書房)は、特集に興味が無くてもそれ以外の記事やコラムが目当てで、いつからか毎号買い続けている。今月号は「SF SCANNER」欄に『ルーフ・ワールド』や『スパンキイ』の著者クリトファー・ファウラーの新作長篇『フル・ダーク・ハウス』が紹介されている。ミステリのシリーズ物なのに冒頭でホームズ役が爆死してしまうのだとかで、相変わらず才気煥発な模様。これは邦訳されそうな気がしますな。ホラー・ファンとしては、"City Jitters"などの都市生活者の不安を主題にした短篇集の方を、早く邦訳して欲しいのだが。
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