購書備忘録2005その5
仕事の出先の書店で、『〈歴史群像〉太平洋戦史シリーズ41・世界の戦艦』(学習研究社)[Amazon]を買う。近代型戦艦の誕生から終焉までを概観できる図解ムック本。歴史群像シリーズの兵器図解は日本軍のものばかりかと思っていたけど、こんなのも出てたんですな。奥付によると2003年5月に発行されているが、ぜんぜん知らなかった。
今となっては完全に過去の遺物ではあるけれど、やっぱり戦艦は美しい。いや、滅んだものだからこそ、美しいというべきか。馬鹿馬鹿しいまでの壮大さが、胸を打つのである。本書は図版・写真が豊富で、いくら眺めていても飽きない。最近のこの手の本はカラーCG画像が売りの一つになっているのだが、本書の場合、設計が奇抜すぎて実際には建造されなかった異形の戦艦の想像画があれこれ載っているのがまた楽しい。
帰宅するとbk1から、H・P・ラヴクラフト『ラヴクラフト全集7』と、パトリシア・ハイスミス『回転する世界の静止点』が届いていた。
H・P・ラヴクラフト『ラヴクラフト全集7』(創元推理文庫)[bk1][Amazon]は同全集の最終巻で、短篇13篇と初期作品、断片、夢に関する書簡を収めている。2巻本だった『ラヴクラフト傑作集』が、第3巻の発行により全集に切り替わってから実に21年。訳者大瀧啓裕氏の執念には、お世辞抜きで頭が下がる。
収録作を確認して、評論『文学における超自然的恐怖』が入っていないのには少々がっかりしたのだが、訳者あとがきによると補巻として詩や評論もいつか出したいと考えているとのこと。信じていいのだろうか? この巻も落ち穂拾い的になってしまってかなり地味めだけど(傑作集から全集に切り替わったしわ寄せが来ている)、詩や評論を独立させて売るとなると、セールス的にはますますきびしいはず。ホラー評論の基本中の基本というべき「文学における超自然的恐怖」ぐらいは、早く文庫でも読めるようになって欲しいんだけどなあ。
パトリシア・ハイスミス『回転する世界の静止点』(河出書房新社)[bk1][Amazon]は、1938年から1949年までに執筆された全14篇を収録している初期短篇集で、半数は未発表作とのこと。意外なことに、本書には収録作の書誌データの他は解説がない。訳者あとがきも何も無しで、ちょっと寂しいような。まあ、作者のことをぜんぜん知らない読者が買うような本ではないかも知れない。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
こんばんは。ご無沙汰しております。
評論『文学における超自然的恐怖』がはいってないのは残念です。「ダンセイニ卿とその業績」とセットで
収録していただきたかった。
7巻の作品は最初のドリームランドもの以外は
辛かったです。
投稿: りき | 2005/02/01 00:44
土田と申します。
覚えていらっしゃらないと思いますが
某掲示板にて幾度がやり取りをさせていただいたことがございます。
『回転する世界の静止点』が書誌データだけだったのは、気になりましたが
良く見るとⅠとなっていますので
後続の巻で開設が付されるのではないかと
愚考しております。
私自身もホラーはスーパーナチュラルが基本と信じておりますので、今後も更新を楽しみにしております。
投稿: 土田裕之 | 2005/02/01 02:16
>りきさん
お久しぶりですね。
補巻がほんとうに出るとしても、これまでの大瀧さんのペースだと、いったいいつになるかって思ってしまいますよねえ。ていねいに仕事をされているからではありますが。
ところで、ラヴクラフトのいわゆる「ダンセイニ風」の作品って、りきさんのような筋金入りのダンセイニ・ファンとしては、物足りなく感じたりはしないのでしょうか? 同好の士としての共感の方が強いですか?
>土田さん
ご無沙汰しております。
いや、まさか土田さんのことを忘れるはずがありません。だって、詳細の判らない古本を買うかどうか迷ってネットを検索すると、たいてい土田さんとこの掲示板の過去ログに行き当たるんですから。
『回転する世界の静止点』、確かに帯に「単行本未収録作品集I」とありますね。奥付の原書の表記も"Posthumous Short Stories Volume 1"となってますし、続きが出るんでしょうか。そういうことを第1巻で宣伝した方がいいのになあ。
投稿: 中島晶也 | 2005/02/01 03:00