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2015/06/08

ホラー専門誌『ナイトランド』復活

 もうご存知の方も多いだろうが、諸般の事情で休刊中だったホラー小説専門誌『ナイトランド』が、版元を《トーキングヘッズ叢書》のアトリエ・サードに変えて活動を再開している。『ナイトランド・クォータリー』と誌名を改めた新創刊号は吸血鬼特集で、詳しい内容はこちら

 以前と較べると、時事的な記事や雑文的コラムが廃されていて、特集に特化した作りになっている。小説作品の中では、夜間高校を舞台に吸血鬼になった少女と奇病で死に行く少女とのせつない友情を描いた、セシル・カステルッチ「エイミーとジーナ」がずば抜けて良かった。解説によると作者は本来ホラーではなくヤングアダルト小説の作家であり、エレン・ダトロウとテリ・ウィンドリングが編んだ吸血鬼アンソロジーに招かれて書いたものとのことで、なるほどと思わされた。

 惜しくも刊行には至らなかった《ナイトランド叢書》も、企画を改めて再出発という告知が掲載されていた。今夏から刊行が始まる第1期のラインナップは以下のとおり。

ロバート・E・ハワード『失われた者たちの谷 ハワード怪奇傑作集』(中村融編訳)
ブラム・ストーカー『七つ星の宝石』(森沢くみこ訳)
アリス&クロード・アスキュー『心霊探偵エイルマー・ヴァンス』(田村美佐子訳)
ウィリアム・ホープ・ホジスン『<グレン・キャリグ号>のボート』(野村芳夫訳)
ウィリアム・ホープ・ホジスン『異次元を覗く家』(荒俣宏訳)
ウィリアム・ホープ・ホジスン『幽霊海賊』(夏来健次訳)

 古典寄りになるらしいことは風の便りに聞いていたが、ハワードの傑作集以外は総入れ替えになっている。とはいえ、なかなかの壮観である。まるで懐かしの《ドラキュラ叢書》(国書刊行会、1976~77。詳しくはこちら)が帰ってきたかのようではないか。

 ホジスンのボーダーランド三部作がついに全訳というのも嬉しいが、何よりも驚かされたのは、このブログでも以前にご紹介した『エイルマー・ヴァンス』連作が予定に入っていることだ。ハワードもホジスンもストーカーも、ホラー文学史で確固たる評価を得ている大作家である。一方でアスキュー夫妻はこれきりしかホラーを書いていないらしく、『エイルマー・ヴァンス』もホラー史を論じた文献で触れられることなんて、まずない。まさかこんなマイナー作が邦訳される日が来ようとは。

 知名度が低いのに邦訳されるということはつまり、純粋に作品のおもしろさのみによって選ばれたということだ。いや、実際、それだけのことはある良作なんですよ、ほんと。日本の読者にどのように受け入れられるか、私は今から楽しみでしようがない。一つだけ気になるのは、仮題とはいえ原題の"Ghost-seer"を訳さずに「心霊探偵」に変更していること。以前に書いたように、内容的に直訳の「見霊者」がぴったりなのである。一般読者には耳慣れない「見霊者」より、「心霊探偵」の方が売り出しやすいんだろうけどなあ。

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