« 2009年12月の読了書から | トップページ | 2010年1月の読了書から »

2010/01/04

怪獣漬けの正月休み

 今年の正月休みは、例年になくたくさんの怪獣映画を見た。まず、近所のツタヤがレンタル半額だったので年末に借りてきた『プテロドン 零式戦闘機 vs 翼竜軍団』『ドラゴンストーム』『U.M.A. 2002 レイク・モンスター』の3本があって、これは返却日が決まっているのでとっとと消化せねばならなかったのである。そこへAmazonに予約していた『ジュラシック・アイランド』と『世界終末の序曲』が届き、どちらも以前からぜひ見たいと恋い焦がれていた映画なので、見ないではおられなかった。さらに、年始の親族一同の集いで大人たちの会話に退屈した小学4年生の三男が、CSのファミリー劇場で放映されていたガメラ特集を見始め、ついつい私も『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』『ガメラ対大悪獣ギロン』を通して見てしまった。4日間で計7本というのは、私としてはちょっとした記録物の体験であった。メジャーなガメラ・シリーズの2本はさておき、他のマイナー海外怪獣映画についてはざっと紹介しておこう。

『世界終末の序曲』(1957)[Amazon]
 もっともまともにおもしろかったのが、これ。低予算巨大生物映画を得意としていたミスターBIGことバート・I・ゴードンの監督作品で、放射線を使い巨大な農作物を作る実験に巻き込まれたイナゴが巨大化、群れを成して襲ってくる。小さな田舎町が一晩で壊滅しているのが発見されるミステリアスな導入から、調査隊の前に巨体を現すお決まりのショックシーン、軍隊との攻防を経て大都市シカゴの蹂躙、イナゴの習性を利用した撃退法の発見と、緊張感を保ちつつテンポ良くストーリーが進行する。低予算の怪獣映画は怪獣だけで見せ場を作り続けるのが困難なので、人間同士のよけいなドラマでお茶を濁しがちなのだが、この映画にはそういう迷いが一切なく、巨大イナゴの恐ろしさとそれをいかに撃退するかのみを描くことに全力を傾注している。
 マスコミ関係者が事件を追うという設定のSF映画はよくあるが、この映画の主人公は功成り名を遂げた女性ジャーナリストで、しかも戦場のルポを得意にしているというのがちょっと珍しい。車載電話を搭載したでかいアメ車を乗り回し、軍に封鎖されている田舎町に入れなくて司令部に談判に行くと、将校に「あなたの本を読みましたよ、素晴らしかった」といわれて顔パスしてしまうのである。
 取材してきた数多くの戦場の有様を思い返し「いくら見ても慣れないものもあるわ」とつぶやく彼女は、そのすぐ後に破壊し尽くされた町に入り、巨大イナゴに人間がむさぼり食われるという地獄のような光景を目の当たりにすることになる。しかも、食われるのはイナゴと同じく実験の事故で放射能を浴び、発声機能に障害を持つ研究者の青年だった。そういえば同じゴードン監督の『戦慄! プルトニウム人間』でも、核実験の放射能を浴びた軍人が巨人化する前の病床で第ニ次大戦から朝鮮戦争へと命ぜられるまま転戦してきた記憶を夢に見て苦しむシーンがあったが、ミスターBIGは案外骨太の映画作家だったのかも知れない。
 惜しいのは、そういう志の高さに予算と撮影技術がついて行けていないことで、イナゴの大きさは場面によってまちまちだし、合成が拙くて半透明になったりする。その極めつけというべきが、合成やミニチュア製作を避けるために、引き延ばしたビルの写真にイナゴを這わせて撮影したという有名な奇策である。パッと見はそれなりの迫力なんだけど、よく見れば写真に映っている影とイナゴの落とす影とのすり合わせが不十分で、一緒に見ていた三男に「あれ写真やんか!」とすぐに見破られてしまった……。もう少し予算があれば、巨大昆虫映画の名作の一つに数えられたかもしれないのに、残念無念。
 ちなみに、同様の写真を使った手法は、川北紘一が『ゴジラVSキングギドラ』でより効果的に導入している。ギドラによって破壊される福岡市街のビルの中に、石膏ボードの表面に写真を貼り付けただけのものが混じっているのである。画面一杯に大写しになったビルが吹き飛ばされるカットであるにもかかわらず、事前に知らされなければまず気づけない見事な仕上がりであった。

『ジュラシック・アイランド』(1948)[Amazon]
 某有名恐竜映画の便乗のようなタイトルなのに、製作年度ははるか昔。実はこれ、原題は"Unkown Island"という。未公開ながら『未知の島』などの訳題でSF映画関連の書籍に紹介されていることもあったので、題名だけは知っているという人もいるのではないか。設定は『キング・コング』前半に似通っていて、戦時中に海軍の偵察機から太平洋上の孤島に恐竜が棲息しているのを目撃した男が、一旗揚げるのが目当てで動物を運ぶのを得意にしている貨物船をチャーターする。野郎ばかりではあまりにもむさ苦しい映画になるので、婚約者も同伴である。
 この映画には『キング・コング』と大きく異なる点が2つあって、まず1つめは登場人物同士が激しくいがみ合うことである。船をチャーターした男は成功することに囚われていて、他人を犠牲にするのもまったく平気。そんな男の本性を知り、婚約者はかつて島を訪れたことがあるというハンサムな船員になびいていく。ところが強欲かつ粗暴な船長も彼女を狙っていて、さらに下級船員たちは身勝手な船長に嫌気が差しており、叛乱を企てる。怪獣との攻防に徹した『世界終末の序曲』とは対極的に、こうした人間関係のもつれがストーリーの中心のようになっていた。
 2つめの違いは、恐竜たちがモデルアニメーションではなく着ぐるみ方式主体で撮影されていること。海外の着ぐるみ怪獣映画は総じて日本の怪獣映画のすばらしさを再確認するだけに終わる仕上がりのものばかりで、この映画もその例に漏れない。ケラトサウルスとコングのような巨大類人猿が着ぐるみで現れ、格闘シーンもあるのだが、造形はちゃちいし演技も下手。しかも、ミニチュアセットを組まないで実景の野原や森で撮影しているものだから巨大感がまったくなくて、ただ着ぐるみを被った人間が屋外をよたよた歩いているようにしか見えやしない。実はこの映画、恐らく世界初のカラー怪獣映画なのだけど、そのせいでますます着ぐるみ怪獣が作り物に見えているような気がする。モノクロにしておいた方が、いくらかは特撮の粗がごまかせたのではあるまいか。

『プテロドン 零式戦闘機 vs 翼竜軍団』(2008)[Amazon]
 太平洋戦争末期、極秘の任務で女性パイロットチームがテニアン島に向け飛ばしていたB29が翼竜のような怪物の攻撃を受け、ある島に不時着する。そこには日本海軍の航空基地があったが、基地は怪物の群れに蹂躙され壊滅していた。女性パイロットたちは日本軍が残した零戦で怪物に立ち向かい、脱出を計る──。
 あらすじだけ聞くとめちゃくちゃおもしろそうなのに、あまりにも低予算でぜんぜんダメ。劇場用映画ではなくケーブルテレビやDVD用に作られたものらしいが、飛行機はCG丸出しだし怪物の見せ方も下手くそ。日本の特撮ヒーロー番組にも負けてるかも。登場人物は一人として軍人に見えず、これまたストーリーは怪物よりも人間同士のぐだぐだしたもめ事の方が主になっていてうっとおしいばかりであった。極秘任務というのが実は原子爆弾の輸送で、戦時中の核攻撃を否定的に描いているのだけはちょっと感心したけれど、他には何も見るべきところがない。よほどのマニア以外は手を出さない方がいいだろう。

『ドラゴンストーム』(2004)[Amazon]
 中世イングランドの小国に数頭のドラゴンが現れ、王の命を受けた討伐隊が退治に乗り出す。ドラゴンは超自然的な存在ではなく、宇宙から隕石のように卵が飛来したエイリアンという設定。作中世界でもドラゴンなんて架空のものというのが常識になっていて、発見者がなかなか信じてもらえないという描写もある。王のお着きの科学者はドラゴンが炎を発するメカニズムを解明してみせ、ラストはそれを利用した方法で最後の一匹が倒される。つまりファンタジーではなく、中世を舞台にしたSFなのである。
 これもケーブルテレビ用の映画らしいが、ロケやセットにある程度金を掛けているようで一応中世の物語には見えるし、ドラゴンのCGもかなりがんばってはいる。しかし、またもや人間同士のゴタゴタでお茶を濁す脚本になっており、ドラゴン退治の方は単調でさっぱり盛り上がらない。せっかく中世でSFというおもしろいアイデアを思いついてるのだから、もう一歩工夫が欲しかった。

『U.M.A. 2002 レイク・モンスター』(1977)[Amazon]
 タイトルと製作年度が一致していないが、1970年代に作られた近未来映画とかではない。実はDVDメーカーが古い映画を最新作に見せかけて売り出したのもので、中身はモデルアニメーション怪獣映画のファンならご存じであろう『魔の火山湖 甦えった巨大生物の恐怖』なのである。『JAWS/ジョーズ』のヒットに端を発する動物パニック映画ブームに便乗して、当時すでに下火になっていたモデルアニメーション特撮の怪獣映画を作ったもので、湖に隕石が落ちたせいで古代の首長竜が蘇り、湖に近づく人間が次々と襲われる。
 今は亡きデヴィッド・アレンを中心にしたアニメーターたちが手掛けたという首長竜は、なかなかよい味を出している。しかし、これまた低予算映画の悲しさで、大暴れするシーンはごく少ない。クライマックスではパワーショベルとの対決という見せ場を設けているものの、ほとんど一方的にあっけなくやられてしまう。しかもカット割りが下手くそで、なにがどうなってやられたのすら解りにくいという始末。モデルアニメーションの怪獣が見られるだけで幸せな気持ちになれる私のような人間ならともかく、それ以外の人にはただ貧相で退屈な映画だろう。ましてやタイトルだけ見て2002年製と信じてたりしたら、激怒するんじゃなかろうか。

|

« 2009年12月の読了書から | トップページ | 2010年1月の読了書から »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/73976/47397408

この記事へのトラックバック一覧です: 怪獣漬けの正月休み:

« 2009年12月の読了書から | トップページ | 2010年1月の読了書から »