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2007年12月の記事

2007/12/31

『幽』第8号&第2回怪談文学賞

 前回の盆休みからいきなり年末に話題が飛んでいるが、一応こちらに全力投球中ということで、ご了承いただきたい。

 メディアファクトリーの、怪談専門誌『幽』第8号[Amazon]が発売されています。今号の第一特集は「京都怪談」、第二特集は「決定 第2回『幽』怪談文学賞」。詳しい内容はこちらのページをどうぞ

 私は今回は、イーディス・ウォートン『幽霊』(作品社)[Amazon]を書評させていただいた。この本については書評には盛り込めなかった話題が少々あるので、また改めてこのブログで取り上げたいと思っているのだけど、果たしていつになるやら……。

 第2回『幽』怪談文学賞の受賞作は、こちらの通り。今回も私は一次選考をお手伝いしたので、このうち長篇部門特別賞の長島槇子「遊郭の怪談(さとのはなし)」だけは読ませていただいている。

『幽』第8号掲載の選考会レポートの中で、短篇部門大賞受賞作の雀野日名子「あちん」について、「実際にウォシュレットで足を洗えるのか?」という、一見些末にも思われるような議論があった。怪談は非現実的な物事を扱う文芸であるからこそ、現実の堅固さから目を逸らしてはならない。現実的なディテール描写が拙くて「ウソだ」ど読者に感じさせてしまうようでは、超自然などという大ウソを信じさせることなど、到底不可能だろう。些末どころではないのである。

 。そして、そうした周到さは、場合によっては一瞬のイメージの鮮烈さで引っぱっていけることもある短篇以上に、長篇ではさらに強く要求されるはずだ。長篇部門特別賞を獲得した「遊郭の怪談」は、鮮烈な怪異描写もさることながら、その前提となる現実らしさを読者に信じさせる姿勢に長けている作品だった。遊郭内の生活をいきいきと描くすばらしい臨場感が、読者を無理なく作品内の世界へと引き込み、あり得ないはずの怪異まで生々しく体験させることに成功しているのである。今回長篇部門の候補になりながら惜しくも受賞を逃したお二人は、『てのひら怪談』などの掌編怪談ですでに成果を上げられている実力の持ち主だったのだが、掌編怪談から長篇怪談にステップアップする要諦は、案外そういうところにあるのではないだろうか。

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