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2007/06/21

『幽』第7号&怪談文学賞

 株式会社メディアファクトリーより怪談専門誌『幽』第7号[bk1][Amazon]の見本誌を頂戴する。内容紹介はこちら。今号は『真景累ヶ淵』を原作にした映画『怪談』に絡めて、三遊亭円朝と累怪談の特集を組んでいる。コンパクトな分量で幅広い話題を解りやすくまとめてあるので、映画の副読本に最適ではないだろうか。私は梅田正彦 編・訳『鼻のある男 イギリス女流作家怪奇小説選』(鳥影社)[bk1][Amazon]の書評を載せていただいている。

 折り返しこちらからは、第2回『幽』怪談文学賞短篇部門の下読み結果を担当氏にメールで送信した。私のところに回ってきた分だけでは全体の傾向は厳密には判らないが、今回は前回に比して応募作のアベレージが上がっていたように思う。応募者としてもやはり第1回の受賞作から賞の傾向を読んでいるのだろうか、怪談らしい怪談を狙っているものが増えていて、中にはかなり恐い作品もあったのが嬉しかった。前回私が下読みした応募作は、長篇部門も含めて怪談を狙っている作品に恐いと思えるものが一つもなかったのである。むしろ、怪談というより幻想小説やファンタジーに属するような作品に、おもしろいものがあった。

 長篇部門優秀賞を受賞した水沫流人『七面坂心中』[bk1][Amazon]がまさにそれで、前にもご紹介したとおり、この小説は厳密には怪談ではなくて怪談をネタにした大胆不敵な幻想小説なのである。読者にいったいどういう評価を受けるのか楽しみでもあり心配でもあったのだけど、ネット上での感想を見た限りでは、どうやらおおむね好評というか解る人には解ってもらえているようである。しかし、「どこが怪談なのか」「ちっとも恐くない」という反発もまた受けているようだ。「怪談文学」というパッケージで売り出されてしまうと、これは避けられまい。幻想小説は好きだが怪談は苦手というような読者の手元に届かないのではないかも、気がかりである。

 ついでに他の受賞作にも触れておこう。長篇賞の黒市郎『夜は一緒に散歩しよ』[bk1][Amazon]は、リーダビリティの高いエンターテインメント・ホラーであった。序盤のわけのわからない恐さは怪談だけど、それを解明しつつエスカレートさせて終盤に至るネタの転がし方が、怪談ではなくモダンホラーなのである。あくまでも恐さにこだわる読者の眼にはそれは失速と映るかもしれないが、よい意味でB級エンターテインメント的な楽しさがあるといえるのではないだろうか。恐さにこだわる読者には、短篇賞の宇佐美まこと『るんびにの子供』[bk1][Amazon]をお勧めする。表題作を含め5篇を収録していて、いずれも怪異を解明することよりも、怪異の影響により常軌を逸していく人々の姿に焦点を当てることで、うまく凄みを出している。

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