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2005年4月の記事

2005/04/29

購書備忘録2005その28 四天王寺青空古書市

 親子5人で阿倍野へ出掛けたついでに、四天王寺境内で開催されていた青空古書市に寄った。妻子を待たせて広い会場をかけずり回ったが、収穫は3冊のみ。

喜多謙『少年少女世界の名作78・怪妖伝』(1972重版,偕成社)
 羅貫中『平妖伝』の子供向けリライトである。こんなものが出ていたとは知らなかった。原作はエログロ描写もあって子供向けの話とは言い難かった記憶があるが、いったいどのように書き直しているのだろうか。
 なおこの叢書には、岡本綺堂の『世界怪談名作集』をベースにした怪奇アンソロジー『幽霊屋敷』や、香山滋による『魔法医師ニコラ』、柴田連三郎による『洞窟の女王』など、他にも怪奇幻想系の本がけっこう入っている。

ジョン・ウィリアムズ『第二次世界大戦ブックス14・パリ陥落』(1971,サンケイ出版)
ノエル・F・ブッシュ『第二次世界大戦ブックス別巻3・日本海海戦』(1973 7刷,サンケイ出版)
 第二次世界大戦ブックスの美本を2冊。『パリ陥落』は、1940年5月に西ヨーロッパに進撃を開始したドイツ軍が戦力は上回っていた連合軍をあっさり打ち破り、わずか6週間でフランスを手に入れてしまうまでのドキュメント。『日本海海戦』は、書名そのままですな。あまり知られていないかもしれないが、実は今年は日本海海戦100周年に当たり、横須賀の「記念艦みかさ」で行事があったり、長谷川模型が1/350の戦艦三笠を発売する予定にしている。1/350三笠は欲しいけど、作っても置いとくとこに困るしなあ。せめてシールズモデルの1/700三笠でも買おうかしらん。

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2005/04/27

購書備忘録2005その27『マイティジャック THE SHADOW FORCE』

 bk1から荷物が到着。中身は下記の2冊。

熊谷カズヒロ『マイティジャック THE SHADOW FORCE(1)』(角川書店)[bk1][Amazon]
 往年の特撮ドラマ『マイティジャック』のコミック版である。『マイティジャック』というと、主役の万能戦艦MJ号以下成田亨デザインの超兵器がどれも素晴らしくカッコイイ反面、ドラマとしては全体にどうも締まらない仕上がりで、秘かにリメイクを望んでいたのは私だけではあるまい。本書の発売を知った時には長年の夢がついに叶うのかと思ったのだが──読んでみると何か違う……。私の感覚が古いのかも知れないけど、妙な凝り方の絵柄でどうにも読みづらく、しかも肝心のMJ号に鋼鉄の塊の質感や重量感がぜんぜんないのだ。まじめに取り組んでいるのは伝わってくるんだがなあ。
 小さいけれど出来がいいコナミの食玩で遊んで気を紛らわすか。

特撮映画研究会編『怪獣とヒーローを創った男たち』(タツミムック)[bk1][Amazon]
 これは2002年に出ていた本で、国産の特撮怪獣ものの造形部門をクローズアップし、着ぐるみ製作者たちの裏話を集めたもの。扱われている作品は時代としては昭和50年代初めぐらいまでだが、ゴジラを始めとした東宝特撮映画に始まり邦画各社の映画やテレビ番組はもちろん、香港など海外での出稼ぎ映画まで非常に広い範囲に及ぶ。ただ、作品数に比して紙幅が不足しており、全体に密度が低くなってしまっているのが惜しまれる。写真も珍しいものも多い反面、モノクロばかりなのが少々寂しい。実際に取材した話や資料はもっとあるだろうし増補改訂版を望みたいところだが、昔の特撮の資料本なんてそんなに売れてないだろうな。

 もう1冊、ネットの古書店で注文した『ヘンリー・ジェイムズ作品集7 密林の獣・荒涼のベンチ』も届いた。

『ヘンリー・ジェイムズ作品集7 密林の獣・荒涼のベンチ』(国書刊行会)
 全8巻の選集の1冊。この巻は怪奇幻想系の作品を多く収録しており、先のリストに挙げたものでは03.06.07.09.11.12.13.16.18.20.21.と実に11篇が読める。そのうち私が未読なのは、「情熱の巡礼」「ベルトラフィオの作者」「いとよき所」の3篇だけなので少々高い買い物なのだが、ヘンリー・ジェイムズの小説は訳文によって印象がぜんぜん変わってしまうこともあり得るから、邦訳はできる限り多く手に入れた方がいいのだ!──ということにしておこう。

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2005/04/24

購書備忘録2005その26『アメリカ短篇小説の研究』

 ネットの古書店で注文した元田脩一『アメリカ短篇小説』が届く。

元田脩一『アメリカ短篇小説』(1972,南雲堂)
 副題に、「ニュー・ゴシックの系譜」とある。ニュー・ゴシックという言葉は、あちこちでいろんな論者が自分なりに使っているので弱ってしまうが、本書の定義ではそれは「アメリカ短篇小説の重要な一系譜」であって、

「ゴシック・ロマンスの要素を受けつぎながら、それらの要素を寓話的象徴の次元にまで高めることにより、あるいはまた、それらを主人公の心理の象徴、ないしは主人公の心理に働きかけ、その心理状態を反映する心理の客観的相関物へと変質させることにより、抽象的観念の具象化や、深層心理の表明に成功した作品」

 なのだという。具体例として、ホーソン『若いグッドマン・ブラウン』『ラパチーニの娘』、ポオ『アッシャー家の崩壊』、ジェイムズ『ねじの回転』、カポーティ『夜の樹その他の短篇』『遠い声、遠い部屋』を取り上げて分析しているが、要は「ただの怪談ではない」系の評論である。この系統の評論の常というか、どうしてただの怪談よりも寓話や心理的象徴が文学として優れていると言えるのかという論拠は提示されていないし、この「ニュー・ゴシック」とやらがどうしてアメリカで、しかも短篇小説という形をとったのかも充分に考察されてはいないのだから、説得力もへちまもあったものではない。まあ、上記の小説の心理的な読み込みの手引きとしてなら、それなりに使えるが。

 どうしてこんな本を買ってしまったのかというと、実は他の本で、ヘンリー・ジェイ
ムズとスピリチュアリズムとの関わりについて触れた文献として名前が挙がっていたからなのである。ところが、あいにくそちらも創元推理文庫版『ねじの回転』に付された赤井敏夫による解説「幽霊の実在を巡る二つの論争──『ねじの回転』と心霊論争」を大きく超えるような情報はなくて、むしろ「ねじの回転」の幽霊の解釈についての幻覚派と象徴派の決め手を欠く論争を、簡略にまとめているのが参考になった。結局、幻覚派も象徴派も、そして彼らの論理の薄弱さを鳥瞰してみせる本書の著者も、自分の見たいものを見ているだけなのである。もともと人間とはそういうものなのだが、「ねじの回転」には人間のそうした特性を誘発させるところが確かにある。それは「ねじの回転」が怪談の技巧として朦朧法を極めた結果の、いわば副作用とでもいうべきものなのだろう。

 だが、それにしてもこの、読者それぞれが幽霊に惑わされて自分の見たいものを見てしまうという構図には、幽霊や妖精、宇宙人といった<彼方からの声>の実見談とも奇妙に似通っているところがある。まさかとは思うがジェイムズは、こうした<彼方からの声>を鵜呑みにしていたスピリチュアリズムに係わる一方で、心霊のヴェールの向こうの闇をいくらかでも見通していて、それを小説に取り込んだというようなことがあり得るのだろうか? 彼の父と兄は、神秘体験の経験者だというが……。

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2005/04/23

ヘンリー・ジェイムズ怪奇作品リスト(暫定版)

 とまあ、あれこれ本は買っているのだが、実際読んでいるのはヘンリー・ジェイムズの怪奇小説ばかりなのだった。今後もジェイムズ関連の話がちょくちょく出てくることになるだろうから、先に彼の怪奇小説は「長短織り交ぜて20篇ほどにはなるようだ」と書いた内訳を、ここでご紹介しておこう。

 作中の怪異を巡って解釈が分かれるのは「ねじの回転」に限らないので、ジェイムズの怪奇作品の数を特定するのはなかなか難しい。彼の怪奇作品を集めた本としてはもっとも名高いレオン・エデル編の"The Ghostly Tales of Henry James"(1949)は、「ねじの回転」を始めぜんぶで18の中短篇を集めているけれど、超自然的恐怖原理主義者の私でも、怪奇小説と言ってしまっていいかどうかためらわれるものも含まれている。その一方で、"Tales"とあるからにはこの本には当然"Novel"すなわち長篇小説は含まれていないわけだが、『アメリカ文学における怪異』(1978,荒竹出版)の中で著者神原達夫は、エデルが採らなかったジェイムズの怪奇短篇としてさらに、「情熱の巡礼」と「『ベルトラフィオ』の作者」の2篇を挙げている。ここらを根拠にできるだけ基準を緩くしつつまとめると、ジェイムズの怪奇小説の総数はどうやら下記の通りになるようである。

01.The Romance of Certain Old Clothes(1868)「古衣装の物語」
02.De Grey: A Romance(1868)「ド・グレイ物語」
03.A Assionate Pilgrim(1871)「情熱の巡礼」
04.The Last of the Valerii(1874)(未訳)
05.The Ghostly Rental(1876)「幽霊貸家」
06.The Author of Beltraffio(1884)「『ベルトラフィオ』の作者」
07.Sir Edmund Orme(1892)「エドマンド・オーム卿」
08.Nona Vincent(1892)(未訳)
09.The Private Life(1892)「私的生活」
10.Jersey Villas(1892) later title : Sir Dominick Ferrand(未訳)
11.Owen Wingrave(1892)「オーウェン・ウィングレイヴ」
12.The Altar of the Dead(1895)「死者の祭壇」
13.The Way it Came(1896) later title : The Friends of the Friends「友だちの友だち」
14.The Turn of the Screw(1898)「ねじの回転」
15.The Real Right Thing(1899)「本当の正しい事」
16.The Great Good Place(1900)「いとよき所」
17.Maud-Evelyn(1900)「モード・イーヴリン」
18.The Third Person(1900)「第三者」
19.The Sacred Fount(1901)「聖なる泉」
20.The Beast in the Jungle(1903)「密林の獣」
21.The Jolly Corner(1908)「懐かしの街角」
22.The Sense of Past(1917)「過去の感覚」

 邦題は既訳から適当に拾い出したもので、訳書によって違うのでご注意。未訳としたものも、充分に調べたとは言い難い。何より、私自身が読んでいない作品も含まれているので、とりあえずの暫定版ということでご了承いただきたい。

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2005/04/22

購書備忘録2005その25『M3ハーフトラック1940-1973』

 bk1より、スティーヴン・ザロガ『M3ハーフトラック1940-1973』、『特撮映画大全集 東宝戦争映画編』が届く。

スティーヴン・ザロガ『M3ハーフトラック1940-1973 オスプレイ・ミリタリー・シリーズ・世界の戦車イラストレイテッド32』(大日本絵画)[bk1][Amazon]
 ハーフトラックとは前輪がタイヤで後輪がキャタピラ式になっているトラックのこと。不整地踏破能力が買われて第二次大戦中にアメリカとドイツが戦車部隊に随伴する歩兵の足として採用し、今日まで続く装甲兵員輸送車の系譜の出発点となった。
 M3シリーズは米軍のハーフトラックで、第二次大戦中連合軍側の機械化歩兵部隊を支えたのみならず戦後も各国へ輸出され、ジープと並ぶベストセラー兵器となった。本書はM3シリーズの生い立ちから対戦車自走砲型や対空自走型といったバリエーションの紹介、米軍機械化歩兵部隊の編成・運用、輸出先各国での活躍といった幅広い話題を、わずか50ページほどの紙幅で巧みにまとめている。対戦車自走砲型であるM3戦車駆逐車の部隊が、北アフリカのエル・ゲタールでティーガー2両を含む敵戦車30両を撃破してドイツ軍の猛攻を防いだ話などは、ドイツ軍びいきのミリタリー・ファンが多い日本では、あまり知られていないのではないだろうか。

川北紘一特別監修『特撮映画大全集 東宝戦争映画編』(セプト)[bk1][Amazon]
 これは2000年に発行されたものだが、今まで買い逃していた。東宝の特撮映画というと『ゴジラ』を始めとする怪獣映画ばかりがクローズアップされていて、もう1本の柱であった戦争映画は観ることができる機会も少なく、ほとんどの特撮映画関連書籍では怪獣映画の添え物のような扱いになっている。本書は、1940年の『燃ゆる大空』から1984年の『零戦燃ゆ』まで全19本の東宝特撮戦争映画について見どころとストーリーを紹介しているもので、スタッフ・キャスト等のデータが不完全だとか写真の画質が粗いとか気になる点は多々あるものの、とにかく類書がないので貴重な一冊と言える。

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2005/04/19

購書備忘録2005その24『東京の幽霊』

 仕事で難波に行ったついでに、古書店を何軒か冷やかした。収穫は1冊のみ。

源氏鶏太『東京の幽霊』(1974,文藝春秋)
 源氏鶏太というと、サラリーマン社会を舞台にしたユーモア小説で一世を風靡した作家であるが、晩年に怪談ばかり書いていたことは、意外に知られていないのではないだろうか。作風としては、ほとんどが古典的な怨霊譚のようだが、流行作家らしく手堅い作りでハズレは少ない。
 本書は、怪談と普通の小説が混ざって収録されている短篇集である。源氏鶏太の怪談本については、 私などがとやかく言うより、土田裕之さんのホームページ《幻想文学館》内の「源氏鶏太怪談の部屋」をご参照いただいた方がいい。初刊本について詳細に書誌情報をまとめられており、たいへん参考になる。

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2005/04/17

購書備忘録2005その23『ブライズデイル・ロマンス』

 大学時代のサークルの面々とお花見。会場が桜宮公園だったので、ちょっと早めに出て、集合時間までにJR天満駅~地下鉄南森町間の古書店を漁った。約1時間半で8軒を駆け足で廻り、収穫は2冊。

ナサニエル・ホーソン『ブライズデイル・ロマンス』(1984,八潮出版社)
ホーソンの代表作の一つとされているのにもかかわらず、なぜか邦訳には恵まれていない長篇。博愛主義に基づいた理想のコミュニティを建設する計画とその挫折を巡る物語だそうだが、心霊主義やメスメリズムも絡められているらしい。あちこちページの端が折られていたり、書き込みがあったりとあまり状態は良くなかったのだけど、格安だったので気にしない。

八木敏雄『アメリカン・ゴシックの水脈』(1992,研究社出版)
 アメリカのゴシック的な風土と、そこから生まれたゴシック文学の流れ──作家としてはC・B・ブラウンからナサニエル・ホーソンまで──を論じた研究書。この分野ではメジャーな本だが、まだ持っていなかったのである。

 お花見後は二次会は遠慮して、JR天満駅以北の古書店を廻ろうかと思っていたのだが、缶ビール1本と焼酎2合半と日本酒1合を飲んでしまってはそうも行かない。梅田に移動してもう一杯お付き合いし、10時ごろに帰宅すると、bk1から荷物が届いていた。

エリザベス・ボウエン『幸せな秋の野原・ボウエン・ミステリー短編集2』(ミネルヴァ書房)[bk1][Amazon]
『あの薔薇を見てよ ボウエン・ミステリー短編集』[bk1][Amazon]が好評だったらしく、第二弾まで発売された。収録作は下記の通り。

 「親友」The Confidante
 「脱落」The Secession
 「そしてチャールズと暮らした」Joining Charles
 「バレエの先生」The Dancing-Mistress
 「ワーキング・パーティ」The Working Party
 「相続ならず」The Disinherited
 「彼女の大盤振舞い」Her Table Spread
 「ラヴ・ストーリー 一九三九」A Love Story,1939
 「夏の夜」Summer Night
 「悪魔の恋人」The Demon Lover
 「幸せな秋の野原」The Happy Autumn Field
 「蔦がとらえた階段」Ivy Gripped the Steps
 「あの一日が闇の中に」A Day in the Dark

 この本についてはまた後日、ホラー・ファン向けの読みどころをご紹介しようかと考えている。

メルヴィン・バージェス『ブラッドタイド』(創元推理文庫)[bk1][Amazon]
 スラムと化した近未来のロンドンに、北欧神話の世界が蘇るというファンタジー長篇。私はファンタジーでも、この本のようにいくらかは現実との接点があるものを好んで読む傾向があって、やはり感性がホラー的なのだろうなと思う。

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2005/04/14

購書備忘録2005その22『宇宙戦争』

 bk1より、H・G・ウェルズ『宇宙戦争』、山田正紀『ロシアン・ルーレット』、藤沢周『焦痕』が届く。

H・G・ウェルズ『宇宙戦争』(ハヤカワ文庫)[bk1][Amazon]
 これは当然、すでに他の版を読んでいるし持ってもいるのだけど、今夏スピルバーグによる新作映画が公開されるのに合わせ、新訳版が出たというので買ってみた。訳者は斉藤伯好で、高橋良平による書き下ろし解説付き。ところが、注文した後になって、創元推理文庫角川文庫からも新訳が出ることを知った。しかも創元推理文庫版は、初出誌の挿絵を再録だなんて……この際、ぜんぶ揃えてしまいますか。

山田正紀『ロシアン・ルーレット』(集英社)[bk1][Amazon]
 殺人事件の被害者である女性の幽霊に出会った刑事が、彼女を追ってあるバスに乗り込む。幽霊が言うには、まもなくこのバスの乗客のほとんどが死に絶えるのだという。ほんとうに「いい人間」だけは助かるというのだが、果たしてそんな乗客がいるのかどうか……。凝ったシチュエーションのホラー。

藤沢周『焦痕』(集英社)[bk1][Amazon]
 この作家は、以前に『雨月』(光文社文庫)[bk1][Amazon]というラブホテルを舞台にした長篇怪談を書いていて、うらぶれたホテルの爛れた空気が凝るようにして怪異が浮かび上がってくる独特の描写力に、たいへん感心させられた。本書は、不可解な妄念に取り憑かれた人々を描いた11の物語が、リレー形式で繋がっている連作短篇集だという。

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2005/04/09

購書備忘録2005その21『ねじの回転 心霊小説傑作選』

 仕事で難波を通ったので、今日発売になったばかりの創元推理文庫版『ねじの回転』をジュンク堂書店で購入した。新刊はほとんどオンライン書店で買うようにしているのだが、これは一刻も早く手に入れたかったのである。帰りのバスの中でさっそく読み始める。

ヘンリー・ジェイムズ『ねじの回転 心霊小説傑作選』(創元推理文庫)[bk1][Amazon]
「ねじの回転」ほか4篇の怪奇小説を、南條竹則と坂本あおいによる新訳で収録したもの。ヘンリー・ジェイムズは作家活動のほぼ全期間に亘って怪奇小説を書いており、その数は長短織り交ぜて20篇ほどにはなるようだ。そのほとんどは何らかの形で邦訳されているのだが、著者の文名の高さと、その気になればどんな解釈でも可能になってしまう朦朧法の語りが災いして、すなおに怪奇小説として読まれてきたとは言い難いようにも思う。ともあれ、私の知る限りでは、ヘンリー・ジェイムズの怪奇小説を集めた邦訳書は少なくともこれが3冊めである。1、2冊めは下記の通り。

(1) 鈴木武雄編・訳『ゴースト・ストーリー』(1972,角川文庫)
  「古衣装のロマンス」"The Romance of Certain Old Clothes"
  「ド・グレイ物語」"De Grey: A Romance"
  「幽霊の家賃」"The Ghostly Rental"
  「エドモンド・オーム卿」"Sir Edmund Orme "
  「こよなき友ら」"The Frends of the Frends"

(2) 古茂田淳三編・訳『ねじのひねり他二篇 ?正解のない幽霊物語?』(1993,あぽろん社)
  「ねじのひねり」"The Turn of the Screw"
  「お友だちのお友だち」"The Frends of the Frends"
  「間違いなく本物」"The Real Right Thing"

 (1)は、ジェイムズが伝統的な怪談を突き抜けていく過程をうまく追った好セレクションになっている。家系にかけられた呪いに対抗する話がいつのまにか精神的吸血鬼の話に変わってしまうのがおもしろい「ド・グレイ物語」は、ほかではなかなか読めないのではないだろうか。ただ、訳文が堅く古めかしいのと、どういうわけか古書相場が不相応に高くなっているのが難点である。

 (2)は、各篇についての著者の創作メモと、ニューヨーク版全集の序文の「ねじの回転」について述べた箇所が併録されているのが嬉しい。特に序文の方では、ジェイムズの目指した朦朧法の怪談とはどういうものかが明確に語り尽くされており、たいへん参考になる。ところが、いくら難物と名高いジェイムズの文体とはいえ、不必要に詰屈に訳しすぎている感があり、かなり読みにくいのが惜しまれる。

 さて、今回の『ねじの回転 心霊小説傑作選』だが、収録作はこのようになっている。

  「ねじの回転」"The Turn of the Screw"
  「古衣装の物語」"The Romance of Certain Old Clothes"
  「幽霊貸家」"The Ghostly Rental"
  「オーウェン・ウィングレイヴ」"Owen Wingrave"
  「本当の正しい事」"The Real Right Thing"

 どちらかというと、怪談らしい怪談にこだわっているのだろうか。「ねじの回転」以外はあまり先鋭なものはないけれど、ヘンリー・ジェイムズの心理主義的な傾向は充分に窺えるセレクションではある。訳文はたいへんよくこなれており、これら3冊の中ではもっとも読みやすいと断言できるので、これからジェイムズの怪奇小説を読んでみようという読者には、ちょうどよい入門書となるだろう。私もこれを機会に、彼の怪奇小説をまとめ読みしてみるつもりである。

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2005/04/02

購書備忘録2005その20『宇宙からのメッセージ』

 近所の新古書店で、野田昌宏『宇宙からのメッセージ』と草川隆『幽霊は夜唄う』を購入。

野田昌宏『宇宙からのメッセージ』(1978,角川文庫)
 東映が『スター・ウォーズ』に対抗して作った同名スペオペ映画のノベライズ。この映画は封切り時に劇場で観ている。東宝も『惑星大戦争』という映画を作っていたけれど、ポスターを見比べた結果、宇宙防衛艦<轟天>号のデザインのあまりの酷さに『惑星大戦争』はパス。ガバナス軍戦艦の方がまだしもと考えて『宇宙からのメッセージ』を観に行ったのだが、SFというよりB級チャンバラなノリの映画でがっかりさせられた。もっとも、その後観た本家の『スター・ウォーズ』も、スペオペといえば<レンズマン>シリーズか<スター・トレック>だった自分には、ずいぶんデタラメでしょぼい映画に思われたのが……(嫌なガキだね)。今、この3本の映画でどれがいちばん好きかと訊かれたら、キッチュさが突出してる『惑星大戦争』だなあ。
 著者あとがきによると、このノベライズは映画とはかなりストーリーが違うとのこと。石ノ森章太郎によるイラストがいっぱい入っている。

草川隆『幽霊は夜唄う』(1987,双葉文庫)
 蚤の市で女性歌手の卵の霊が憑いたレコードを拾った男が、彼女の死の真相を探っていくというホラー・ミステリ。著者は「宇宙塵」出身のSF系作家らしいが、東雅夫・石堂藍編『日本幻想作家名鑑』によると、本書と同傾向のホラー・ミステリをいくつか書いているとのこと。

 帰宅すると、bk1から松平俊久『図説ヨーロッパ怪物文化誌事典』が届いていた。

松平俊久『図説ヨーロッパ怪物文化誌事典』(原書房)[bk1][Amazon]
 怪物を「文化装置」として読み解くという姿勢で編まれた、中世ヨーロッパ怪物事典。序文と第1章で基礎となる理論を提示し、第2章が本体の事典、第3章は実践編として旧50スイス・フランに現れた奇怪な四足獣スーを読み解くというユニークな三部構成になっている。単に事典として見ても、カラー図版がたいへん豊富な上に典拠や参考文献がしっかりと記載されており、類書から一頭地を抜く仕上がりである。怪物好きなら必携の一冊と言えよう。

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