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2005/04/09

購書備忘録2005その21『ねじの回転 心霊小説傑作選』

 仕事で難波を通ったので、今日発売になったばかりの創元推理文庫版『ねじの回転』をジュンク堂書店で購入した。新刊はほとんどオンライン書店で買うようにしているのだが、これは一刻も早く手に入れたかったのである。帰りのバスの中でさっそく読み始める。

ヘンリー・ジェイムズ『ねじの回転 心霊小説傑作選』(創元推理文庫)[bk1][Amazon]
「ねじの回転」ほか4篇の怪奇小説を、南條竹則と坂本あおいによる新訳で収録したもの。ヘンリー・ジェイムズは作家活動のほぼ全期間に亘って怪奇小説を書いており、その数は長短織り交ぜて20篇ほどにはなるようだ。そのほとんどは何らかの形で邦訳されているのだが、著者の文名の高さと、その気になればどんな解釈でも可能になってしまう朦朧法の語りが災いして、すなおに怪奇小説として読まれてきたとは言い難いようにも思う。ともあれ、私の知る限りでは、ヘンリー・ジェイムズの怪奇小説を集めた邦訳書は少なくともこれが3冊めである。1、2冊めは下記の通り。

(1) 鈴木武雄編・訳『ゴースト・ストーリー』(1972,角川文庫)
  「古衣装のロマンス」"The Romance of Certain Old Clothes"
  「ド・グレイ物語」"De Grey: A Romance"
  「幽霊の家賃」"The Ghostly Rental"
  「エドモンド・オーム卿」"Sir Edmund Orme "
  「こよなき友ら」"The Frends of the Frends"

(2) 古茂田淳三編・訳『ねじのひねり他二篇 ?正解のない幽霊物語?』(1993,あぽろん社)
  「ねじのひねり」"The Turn of the Screw"
  「お友だちのお友だち」"The Frends of the Frends"
  「間違いなく本物」"The Real Right Thing"

 (1)は、ジェイムズが伝統的な怪談を突き抜けていく過程をうまく追った好セレクションになっている。家系にかけられた呪いに対抗する話がいつのまにか精神的吸血鬼の話に変わってしまうのがおもしろい「ド・グレイ物語」は、ほかではなかなか読めないのではないだろうか。ただ、訳文が堅く古めかしいのと、どういうわけか古書相場が不相応に高くなっているのが難点である。

 (2)は、各篇についての著者の創作メモと、ニューヨーク版全集の序文の「ねじの回転」について述べた箇所が併録されているのが嬉しい。特に序文の方では、ジェイムズの目指した朦朧法の怪談とはどういうものかが明確に語り尽くされており、たいへん参考になる。ところが、いくら難物と名高いジェイムズの文体とはいえ、不必要に詰屈に訳しすぎている感があり、かなり読みにくいのが惜しまれる。

 さて、今回の『ねじの回転 心霊小説傑作選』だが、収録作はこのようになっている。

  「ねじの回転」"The Turn of the Screw"
  「古衣装の物語」"The Romance of Certain Old Clothes"
  「幽霊貸家」"The Ghostly Rental"
  「オーウェン・ウィングレイヴ」"Owen Wingrave"
  「本当の正しい事」"The Real Right Thing"

 どちらかというと、怪談らしい怪談にこだわっているのだろうか。「ねじの回転」以外はあまり先鋭なものはないけれど、ヘンリー・ジェイムズの心理主義的な傾向は充分に窺えるセレクションではある。訳文はたいへんよくこなれており、これら3冊の中ではもっとも読みやすいと断言できるので、これからジェイムズの怪奇小説を読んでみようという読者には、ちょうどよい入門書となるだろう。私もこれを機会に、彼の怪奇小説をまとめ読みしてみるつもりである。

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