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2005年3月の記事

2005/03/27

購書備忘録2005その19『最後の審判の巨匠』

bk1より、レオ・ペルッツ『最後の審判の巨匠』、廣野由美子『批評理論入門』、陰山琢磨『蒼穹の槍』、横山光輝『原作完全版ジャイアントロボ(下)』が届く。

レオ・ペルッツ『最後の審判の巨匠』(晶文社)[bk1][Amazon]
 オーストラリアの作家による、伝説的な幻想ミステリとのこと。訳者は幻想アンテナなどネット上で精力的に活動されているpuhipuhiこと垂野創一郎氏で、本書をさらに楽しむための情報サイト「Bibliotheca Puhipuhi」も開設されており、ネット時代ならではの試みとして注目される。当然、本書の巻末にも詳細な解説を付されているのだけど、どうもネタバレしているところがあるらしい感じなので、本編にまだ手を付けていない私は慌てて読むのを止めた。それでも、ラヴクラフトとの関連に言及した部分は、否応なく目に焼き付いてしまったのだが──。
実のところ、ラヴクラフトは1926年の始めには「文学における超自然」の1~4章を書き上げていたというから、冒頭の恐怖論が1930年の『最後の審判の巨匠』の英訳に影響を受けているというのは、ちょっとあり得ない。果たしてそれ以前に原書を読んでいたかどうかだが、それほど感銘を受けていたのなら、饒舌な手紙魔の彼はどこかに書き残しているのではないだろうか? 私はアーカムハウス版の書簡選集も読んでいないので、何とも言えないのだけど。

廣野由美子『批評理論入門』(中公新書)[bk1][Amazon]
 副題が「『フランケンシュタイン』解剖講義」となっていて、メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』を俎上に載せ、様々な批評理論の立場から論じてみることで、「小説とは何か?」に迫った本とのこと。少々堅苦しい雰囲気だが広範な話題を扱っているようで、書名通りの批評理論の入門書としても、『フランケンシュタイン』を読み込む手引きとしても、なかなか有用な本かも知れない。

陰山琢磨『蒼穹の槍』(カッパ・ノベルス)[bk1][Amazon]
 2015年の近未来を舞台に、麻薬マフィアによる宇宙空間からの破壊テロを描いたSF小説。一応、どういうテロかというのが一つの焦点らしいが、「全長二〇〇センチ、最大径二〇センチ、重量七〇〇キロ、構造タングステン・カーバイド、表面硬化処理、耐熱鏡面加工」の<槍>というと、たぶんアレなんでしょうなあ。
 著者は以前、朝日ソノラマ文庫で『センチュリオン急襲作戦』という一風変わったロボットアクション小説を書いている。今では絶版で、私も古書店で見つけたものを最近になって読んだのだけど、なかなかおもしろかった。このセンチュリオン、ロボットものにありがちな万能兵器ではなく「分隊支援火力プラットホーム」だというのである。荒削りなところもある小説だが、このセンチュリオンの設定を聞いてビビッと来てしまう方ならきっと楽しめるはずなので、ぜひとも探し出して読んでみて欲しい。

横山光輝『原作完全版ジャイアントロボ(下)』(講談社)[bk1][Amazon]
 これは即日読了した。おもしろかったけど、上巻と較べるとちょっと勢いが落ちるような……。特にGR2との決着は、もっとしつこく引っ張って欲しかったなあ。もう1冊、補巻が出るらしい。

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2005/03/26

『忌まわしき絆』SFホラーミステリ

「近日中に詳しい内容を紹介」と言いつつ3週間以上過ぎてしまったが、L・P・デイビス『忌まわしき絆』(論創社)[bk1][Amazon]について。結論から先に書けば、これは「SFホラーミステリ」でしょうか。あ、いや──決してめんどうになって投げているわけでは……。核になるネタはSF、そのネタの扱い方はホラー、でも全体の体裁はミステリというような小説だったのである。

 主人公は英国の小学校の教師。彼の担任するクラスで、生徒が前触れなく突然校舎から飛び降りて死亡するという不可解な事故が起きる。同僚の女性教師によると、その場に居合わせた生徒の一人は、転校してくる前の学校でも原因不明の転落事故の現場にいたのだという。これは単なる偶然なのだろうか? 調査を進めていくうちに、二人はこの生徒の持つ超常的な能力と、出生の秘密に絡んだその能力の忌まわしい起源を知ることになる。

 とまあ、物語の大枠のみを抜き出して見ると、これはSF以外の何物でもない。だが、超能力の起源についての説明は当時としてもそう目新しいものではなく、超能力そのものについての掘り下げもごく浅いので、SFとして読むと食い足りない印象は否めないだろう。

 驚異より恐怖に焦点を当てているところは、ホラー的と言える。ところが、超能力を行使する場面の描写はごく大人しいものであって、恐怖感もそれほどではない。唯一、原題の"The Paper Dolls"に託した、ある異様なイメージが提示されるのが印象に残るが(その意味では本書の邦題はいただけない)、それもぼんやりとした暗示に留まっていて、大きな衝撃を与えるには至らない。

 ではつまらないのかというと、決してそんなことはなくて、主役の教師カップルが英国の田園地帯を巡りつつ謎を解明していく過程は、くどすぎず浅すぎないバランスの取れた人物造形と牧歌的なユーモアを湛えた筆致のおかげで、それなりに楽しめる。どうやら、著者の主眼はこうした古き良きミステリ的な謎解きのおもしろさにあるように思われる。SF的な趣向もホラー的な恐怖感も、それを盛り立てはするが邪魔しない程度に抑えられているかのようだ。

 巻頭の解説によると、1964年に発表された本書は著者デイビスのデビュー作で、出版されるまで4つの出版社で「ジャンル分けできない」と出版を断られたのだという。確かに、本書は安易なジャンル分けを拒む小説ではあるが、出版をためらうほどの異色作とはとても思えない。ミステリ仕立てのSF的ホラーと言えば、同時代では解説でも名の挙がっているジョン・ブラックバーンがいるし、ホラー史を通観すればそれこそマッケン、ブラックウッドあたりからリチャード・マシスンらを経てモダンホラーの諸作まで、一つの伝統があるとすら言える。その流れの中では、本書はそこそこ楽しめる凡作の部類でしかないからだ。

 にもかかわらず本書が刊行されるまで紆余曲折があったというのは、ひょっとしたら著者があくまでミステリ・ジャンルの革新のつもりでこの小説を書き、ミステリとして版元に売り込んでいたのかもしれない。SFホラーとしては凡作でも、もしも予備知識なしでこの小説をミステリとして読まされたのなら、編集者が戸惑ったとしてもまあ不思議はない。海外の書誌サイトなどを見ると(例えばこことか)、デイビスにはSFの叢書の一冊として出版されている著作も多いようなので、果たしてそこまでミステリにこだわりがあったのだろうかとも思うのだが。

 デイビスの作家としての活動時期は1970年代末までで、この後モダンホラー・ブームによって彼が書いたようなSFホラー風味のエンターテインメント小説が陸続と生まれてくるわけだが、その波には乗れないまま消えていったようだ。英米でもどちらかというとマイナー作家扱いのようで、他の長篇がこの後邦訳されることもまずなかろうと思われるので、ホラー史に関心のある方なら、本書は一読しておく価値はあるだろう。

 また、本書は1970年にハマー・プロによってテレビのホラー・オムニバス・シリーズ"Journey to the Unknown"の一篇として映像化されているそうである。たぶん日本では未放映だと思うが、そちらの方面は疎いのでご勘弁を。

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2005/03/21

購書備忘録2005その18 『神狩り2 リッパー』

 bk1より、山田正紀『神狩り2 リッパー』、『SF JAPAN』2005年春号、パトリシア・ハイスミス『目には見えない何か 中後期短篇集1952-1982』が届く。

山田正紀『神狩り2 リッパー』(徳間書店)[bk1][Amazon]
 まさかあの『神狩り』の続編が書かれようとは……。前作の終わり方が、あの形以外は考えられないというぐらいにばっちり決まっていたこともあって、期待も大きい反面、少々不安も抱かずにはいられない。冒頭からいきなり巨大な天使が舞い降りてきて怪獣さながらに暴れたりしているが、伝奇アクション的にスケールアップされているのだろうか?

『SF JAPAN』2005年春号(徳間書店)[bk1][Amazon]
 この号では第25回日本SF大賞が発表されていて、押井守のアニメ映画『イノセンス』が受賞している。『イノセンス』は、私が去年劇場で観たなかではいちばんおもしろかった映画だけれど、果たしてSFとして傑出していただろうか? 選考委員の選評を読んでも、そこのところが今一つよく解らない。はっきり誉めてない委員もいて、押井守のこれまでの功績を加味してという話が出たようにも書いてある。それはジャンルの年次ベスト賞として正しいことなのだろうか? 以前から日本SF大賞は、本格オカルト小説の『帝都物語』や、SFとしては大したことがない『ガメラ2 レギオン襲来』が受賞したりと、どうも首を傾げさせられることが多いように思う。

パトリシア・ハイスミス『目には見えない何か 中後期短篇集1952-1982』(河出書房新社)[bk1][Amazon]
 先に買った初期短篇集『回転する世界の静止点』(河出書房新社)[bk1][Amazon]の続巻で、全14篇を収録。初期短篇集に付いていなかった解説は、こちらに一括して収録されている。このような上下二巻組なら上巻にはっきりそう書いておいた方が、読者にも親切だし売り出し方としてもよかったのではないだろうか。

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2005/03/15

購書備忘録2005その17 『死小説』

bk1より、福澤徹三『死小説』、日本推理作家協会編『暗闇(ダークサイド)を追いかけろ 最新ベスト・ミステリー ホラー&サスペンス編』が届く。

福澤徹三『死小説』(幻冬舎)[bk1][Amazon]
「小説新潮」に発表された5篇を収録した怪奇短篇集。最近の福澤の怪談は、人間関係のもつれを背景にした晩年の源氏鶏太を思わせるものが多いが、厭世的な諦観と強迫的なまでの罪悪感がより一層暗く、陰鬱である。本書の収録作中、私のいちばんのお気に入りは、老人福祉業界を題材にした「黒い子供」。そう簡単には日常が崩れてしまわないところが、かえって不気味な雰囲気を強調しているのに注目されたい。次点は、性への妄執が淫靡きわまりない「夜伽」。

日本推理作家協会編『暗闇(ダークサイド)を追いかけろ 最新ベスト・ミステリー ホラー&サスペンス編』(光文社カッパノベルス)[bk1][Amazon]
広義のミステリーの最新動向を紹介する目的で編まれた3巻本アンソロジーのうちのホラー&サスペンス編で、2001年1月号から2003年12月号までの各雑誌に発表されたものから選んだ全17篇を収録している(収録作の詳細は、上記のbk1のリンクを参照)。いっそ年次ベストにして、毎年発刊してくれたら非常に便利なのだが……。いや、このアンソロジーに限らず、どこでもいいから国産ホラー短篇の年次ベスト集の企画を立ててくれないものだろうか。

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2005/03/14

購書備忘録2005その16 『闇夜に怪を語れば 百物語ホラー傑作選』

 bk1より、東雅夫編『闇夜に怪を語れば 百物語ホラー傑作選』、森銑三『新編 物いう小箱』、井上雅彦『ベアハウス』が届く。

東雅夫編『闇夜に怪を語れば 百物語ホラー傑作選』(角川ホラー文庫)[bk1][Amazon]
 古典から現役作家までぬかりなく押さえた上に、評論やエッセイ・対談まで加えて「百物語的なるもの」を多角的に浮き彫りにする、ヒガシ調とでもいうべき構成のアンソロジー(収録作の詳細は、上記のbk1のリンクを参照)。畑耕一の「怪談」などは、初の文庫化ではないだろうか? 本書をきっかけに、古い作品にはやや冷たい印象がある角川ホラー文庫が変わってくれればと思う。

森銑三『新編 物いう小箱』(講談社文芸文庫)[bk1][Amazon]
 知る人ぞ知る名手による怪談・奇談集の文庫化である。本邦と中国の古典からの再話を、計44編収録している。5編を追加している上に、書誌や年譜、解説が付けられているので、元版をお持ちの方も要チェック。

井上雅彦『ベアハウス』(光文社文庫)[bk1][Amazon]
 何と熊ホラーである。しかも、動物パニックとかUMAとかではなく、スーパーナチュラルらしい。倉阪鬼一郎でも田中啓文でもなく井上雅彦だから、笑いの要素はなくて本気のはずだが……。

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2005/03/12

『夜夢』他2冊・受贈書御礼

 祥伝社文芸出版部より、柴田よしき『夜夢(よるゆめ)』、岩井志麻子『嫌な女を語る素敵な言葉』、物集高音『大東京三十五区 亡都七事件』を頂戴する。どうもありがとうございました。

 これまで私は、祥伝社とは一度も仕事をしたことがない。にもかかわらず、「怪奇幻想文学研究家」とは名ばかりでほとんど活動らしい活動をしていない私にこのように本を送っていただけるとは、恐縮至極という他ない。

柴田よしき『夜夢(よるゆめ)』[bk1][Amazon]
書き下ろしホラー・アンソロジーや雑誌のホラー特集に寄稿した短篇を集めたもの。書名と同じ題の短篇はなくて、日常の「昼」に対する非日常の「夜」を共通のコンセプトにしているのだという。艶のある紫に染められた装丁が美しい本。

岩井志麻子『嫌な女を語る素敵な言葉』[bk1][Amazon]
「小説NON」に発表された、男女の恋愛絡みの連作ホラー短篇の単行本化。あいにく雑誌掲載時に読んでいなかったのだが、ホラーといってもサイコ系のようである。なぜか帯の推薦文を竹中直人が書いている、と思ったら、著者の長篇『チャイ・コイ』を竹中直人が映画化するんですね。ちっとも知らなかった。

物集高音『大東京三十五区 亡都七事件』[bk1][Amazon]
 昭和初期の東京を舞台に、安楽椅子探偵ならぬ縁側探偵が怪奇事件を科学的に解明していくシリーズの、第三弾にして完結編。文体が凝っていて、登場人物の台詞を時代設定に合わせるのみならず、地の文まで講談調にして古風な雰囲気を出している。こういうのも擬古文と言うのだろうか?

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2005/03/05

購書備忘録2005その15 『空の果てまで』

 仕事の出先で寄った新古書店で、高橋たか子『空の果てまで』(1983,新潮文庫)を購入。「私のすぐそばに存在する者は、私は絶対に許せない」と、家族や友人に激しい憎悪をぶつけていく女性の物語。怖すぎ。

 以下3冊はbk1で購入したもの。

L・P・デイビス『忌まわしき絆』(論創社)[bk1][Amazon]
「論創海外ミステリ」という叢書の一冊だが、超能力を持った少年の犯罪を巡るホラー風の長篇らしい。原書は1964年に発表されたもので、モダンホラーの先駆の一つと言えるかも。これは読み始めているので、近日中に詳しい内容も紹介しようと考えている。

クリストファー・プリースト『魔法』(ハヤカワ文庫)[bk1][Amazon]
 これはハードカバー版をすでに持っているが、訳文を全面的に手直ししたと聞いたので購入した。「SFマガジン」4月号によると、同じ文庫の『奇術師』が好評で、プリーストはいろいろ邦訳が続くようである。

横山光輝『原作完全版ジャイアントロボ(上)』(講談社)[bk1][Amazon]
 往年の傑作特撮テレビドラマの原作で、完全版はこれが初めての発売らしい。さっそく読んでしまったが、幼時より慣れ親しんできたテレビ版との違いに驚きの連続であった。ロケットパンチの元祖はGR2だったのか……。下巻の発売が待ち遠しい。

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2005/03/04

「SFマガジン」に海外ホラー情報

 発売中の「SFマガジン」4月号[bk1]のSF BOOK SCENE欄に、ジャック・ケッチャムの諸作やS・P・ソムトウの『ヴァンパイア・ジャンクション』を訳している翻訳家の金子浩が登板、未訳の海外ホラー長篇を3つ紹介してくれている。さらに12月号では、ホラー・ジャンル全体の最新動向を知らせてくれる予定とのこと。私のように英語が苦手な者には、ほんとうに助かる。「ミステリマガジン」の「幻想と怪奇」特集は最近懐古趣味だし(もちろん、これはこれで嬉しいんですけどね)、海外ホラーの動向を日本語で知ることのできる機会は非常に少なくなっている。たとえ年1度でもいいから、海外ホラー情報はぜひとも恒例にしていただきたいですね。

 今月号の「SFマガジン」にはこの他にも、「ベストSF2004」上位作家の特集ということで、クリストファー・プリーストのホラー風味の短篇「火葬」が載っている。文化摩擦と架空の虫のおぞましい生態を題材にした佳品で、虫が苦手でない方にのみお奨め──いや、恐怖感という点では、虫嫌いの方が楽しめるのか?

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