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2005年2月の記事

2005/02/27

購書備忘録2005その14 『小説 KAPPA』

 給料日直後の休日なので、久しぶりに古書店巡り。大阪市営地下鉄谷町線を利用して守口市から大阪市旭区、城東区、都島区の古書店を十数軒廻ったのだが、戦果わずかに7冊。惨敗ですな。

柴田哲孝『小説 KAPPA』(1991,CBSソニー出版)
 これはUMA小説の先駆というべきものの一つだが、謎の生物「カッパ」の正体が、捨てられたペットが野生化したワニガメとたまたま知ってしまって(誰も読まないような古本だから、ネタバレしてもいいよね?)、発行時にはスルーしていた。しかし、今となっては未来を正確に予見していた小説として、新たな価値が──ないかな……。

横山光輝『鉄人28号』1~3巻(1996,光文社文庫)
 知っている人は知っているだろうが、『鉄人28号』の流布版は大幅にカットされていて、完全な形ではまだ単行本化されていない。この光文社文庫版は初出雑誌の誌面から復刻したもので、もっとも完全版に近いバージョンなのだけど、絶版になってしまって揃いだとなかなか手が出せない古書価が付けられていることが多いのである。今回、2軒の古書店で冒頭3巻を安価で拾えた。バラで集めるのは非常に難しいだろうが、そのうち完全版が出るかも知れないし、気長に行こう。

リチャード・ハンブル『第二次世界大戦ブックス32 壮烈! ドイツ艦隊』(1972,サンケイ新聞社出版局)
 近代~第二次大戦までのドイツ海軍史概説。サンケイの「第二次世界大戦ブックス」シリーズは、私の軍オタ少年時代のバイブル的存在だった。中には今読むと物足りない本もあるのだけど、安くて状態のよいものを見掛けると、懐かしくてついつい買ってしまう。当時は陸物中心に読んでいたので、これはまったく未読。

ジョン・トーランド『バルジ大作戦(上・下)』(1989六刷,ハヤカワ文庫)
 これはすでに持っているけれど、中学生のころから何度も読み返してボロボロになってきたので、買い換え用に。どうせならハードカバー版を狙うべきだったか? 角川文庫で常盤新平訳のバージョンもあるらしいが、未見。

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2005/02/24

購書備忘録2005その13 『万物理論』

 bk1より、グレッグ・イーガン『万物理論』、牧野修『蠅の女』、山田正紀『サイコトパス』、恩田陸『ユージニア』、平山瑞穂『ラス・マンチャス通信』、大井篤『海上護衛戦』が届く。

グレッグ・イーガン『万物理論』(創元SF文庫)[bk1][Amazon]
『SFが読みたい! 2005年版』での紹介にそそられて注文した。「『万物理論』とは、すべての自然法則を包み込む単一の理論である」と聞いては、読まずにはいられない気持ちになるではないか。グレッグ・イーガンの小説は、まだ一つも読んだことがない──というより、実は80年代以降の海外SFはろくに読んでいないのである。ホラーを読んで、「これってSFでは?」と思ったことはけっこうあるんだけど……。

牧野修『蠅の女』(光文社文庫)[bk1][Amazon]
 カバーには「書き下ろし長編ホラー」とあるけれど、約200ページと中篇程度の分量。この手の薄い書き下ろし文庫は、祥伝社が走りなのだろうか? 単価としては割高になるが、長すぎると散漫になってしまいがちなホラーとは相性がいい刊行形態ではないだろうか。

山田正紀『サイコトパス』(光文社)[bk1][Amazon]
山田正紀のSFや冒険小説はだいたい読んでいるのだけど、最近のミステリはほとんど手付かずになっている。ジャンルの拘束力よりも書き手の個性の方が上回る作家なのはよく解っているのだが、山田正紀が本格的にミステリに進出した時期と、私が時評の仕事を受けてホラーしか読めなくなった時期が、たまたま重なったのだ。本書は著者あとがきによると、「サイコ・スリラーであり、ニューロティックなサスペンスであり、広義な意味でのミステリーであり、アクション小説でもあります」とのこと。

恩田陸『ユージニア』(角川書店)[bk1][Amazon]
これもサイコ系+αらしいが、ブックデザインがとにかく凄いと評判になっている本。実際手にとって見ると、確かに凄い……。中身も負けずに凄いことを期待。

平山瑞穂『ラス・マンチャス通信』(新潮社)[bk1][Amazon]
第16回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。帯によると、「カフカ+マルケス+?」の「異形の成長小説」とのこと。幻想小説の売り文句では、カフカはほんとうに人気者である。次点はボルヘス、乱歩あたりか? いわく言い難い作品が多いジャンルなので、仕方ないのかも知れないが。

大井篤『海上護衛戦』(学研M文庫)[bk1][Amazon]
太平洋戦争時に海上護衛総司令部参謀であった著者が、日本海軍の海上輸送防御のあり方を批判的に検証した本。昭和28年の初版以来、幾度かの改版を経ながら生き残り続けている名著とのこと。ネットの方々でいい評判を目にしたので、注文してみた。

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2005/02/20

便乗企画:ホラー・ファンはこれも読んで! 2004

 こちらではもったいぶった予告をしてしまったが、実はそんな大層な話ではない。『SFが読みたい! 2005年版』[bk1][Amazon]の笹川吉晴氏による昨年度のホラー出版総括は、限られたスペースで手際よく多くの本を紹介されており、ホラー・ファンの手引きとして立派に役立つものになっている。ただ、この本の性格上、ホラー総括から外れてしまっている書籍の中に、ホラー・ファンにお勧めしたいものがあるので、フォローのような意味でご紹介したいというだけだったのである。少々誤解を招くような書き方だったようで、申し訳ない。

 さて、まず1冊目は、エリザベス・ボウエン『あの薔薇を見てよ ボウエン・ミステリー短編集』(ミネルヴァ書房)[bk1][Amazon]。古参怪奇ファンには、「猫は跳ぶ」 や「魔性の夫」といった心理描写に優れた不吉な肌触りの怪奇短篇でお馴染みの作家の短篇集である。
 怪奇小説に深い関心を持っていたとはいえ、ボウエンはもともと純文学系の作家である。本書は学術書専門の版元から出ているだけあって、広い意味で幻想小説と言えるのものすら全20篇のうちせいぜい8篇ほどにしかならないので(しかも半数は既訳)、ホラー総括から抜け落ちるのも無理はないとも言える。だがしかし、そのどれもが優れた作品ばかりなので、決して読み逃すべきではない。
 中でも、第二次大戦下の空襲に怯え静まりかえったロンドンの夜に、ハガードの『洞窟の女王』に登場する古代都市コーを幻視する「幻のコー」は、今まで邦訳されていなかったことに憤りを覚えてしまうほど素晴らしい。本書の訳者太田良子氏は解説で、「ロンドンの空襲the Blitzをこれほど鮮やかに描いた作品はないとされる秀作」と紹介しているけれど、これはむしろそうした現実に拮抗する幻視を描いているのであって、もっと大きな普遍性を持った文学として読むべきだろう。
 この「幻のコー」に限らず、訳者の解説は全体に、怪奇幻想ファンにはどうも共感しづらいように思う。訳文についても、既訳に較べて正確さを向上させることを心掛けているのがはっきり見て取れる反面、全体にやや硬く、小説の文章としての味わいに若干疑問を感じる読者もあるかも知れない。とはいえ、ボウエンの作品自体は、そんな些細な引っかかりを吹き飛ばすだけの力があるので、ぜひ読んでみて欲しい。

 次は、アルフレッド・ベスター『願い星、叶い星』(河出書房)[bk1][Amazon]。オールタイム・ベスト級の傑作『虎よ! 虎よ!』で名高いSF作家の中・短篇集で、当然『SFが読みたい! 2005年版』ではSFの枠内で紹介されている。だが、本書の目玉の一つともなっているベスター初期の代表作である「地獄は永遠に」は、伝説的なファンタジー雑誌「アンノウン・ワールズ」に発表された中篇で、悪魔の誘惑を題材にした怪奇小説なのである。
「アンノウン・ワールズ」(創刊時の誌名は「アンノウン」)は、1939年にジョン・W・キャンベル・ジュニアによって創刊されたファンタジー専門パルプ・マガジンである。短命に終わったものの、SFの手法を援用して魔法が存在する世界を論理的にシミュレートしてみせたような作品を送り出し、ファンタジーに革命を起こした雑誌として知られている。生き生きとしたキャラクター造形とユーモアを交えた語り口と相俟って、同時期のライバルだった「ウィアード・テイルズ」の時代がかったおどろおどろしさと較べると、「アンノウン」はずっと洗練された今日的な感覚の作品が多い。フリッツ・ライバーの『妻という名の魔女たち』[bk1][Amazon]やL・ロン・ハバードの『フィアー』[bk1][Amazom]などの初出が「アンノウン」だったと言えば、具体的にイメージしてもらえるだろうか。
「地獄は永遠に」は、こうしたアンノウン系ファンタジーの長所がたいへんよく判る作品である。空襲下のロンドンで戦争をよそに退廃的な悦楽に耽り続けている6人の好事家たちが、芝居の中の儀式でほんとうに悪魔を召喚してしまい、悪行の褒美に各々が望む現実へ転移させてもらえることになるが……というお話。悪魔に負けていない6人のえげつないキャラクターと、彼らが望んだはずの理想的世界のグロテスクさ(生理的な意味ではないのでご安心を)が読みどころで、初出から60年後の今読んでもまったく古さを感じさせない。いや、それどころかベスターの文体は、いたずらにくどくなりがちなモダンホラー作家よりも無駄がなく洗練されていると言うべきだろう。
 SF史のキイ・パースンであるキャンベルが手掛けたせいか、これまでアンノウン系ファンタジーはファンタジーのSF化というような捉え方をされることが多く、特に日本では、ホラー系の評論で体系づけて触れられることがあまりなかったように思う。だが、モダンホラーの源流とされることが多い、いわゆる<異色作家>系モダン・ホラー(この分類は日本でしか通用しないので、要注意)の前に、「地獄は永遠に」のようなアンノウン系ファンタジーを置けば、ウィアード・テイルズに代表されるパルプ・ホラーから現在のモダンホラーが生まれてきた過程が、よりはっきりするのではないだろうか。

 最後は、グレアム・ジョイス『鎮魂歌(レクイエム)』(ハヤカワ文庫)[bk1][Amazon]。海外では非常に評価が高い作家にもかかわらず、著者の長篇はこれが初めての邦訳である。
 本書はプラチナ・ファンタジーの一冊として邦訳されたせいで、『SFが読みたい! 2005年版』では笹川氏のホラー総括から抜けているのだが、内容的には事故死した妻の影に取り憑かれた男を描いた幽霊もののホラーに近い作品なので、石堂藍氏のファンタジー総括でも書名しか触れられていない。グレアム・ジョイスは安易なジャンル分けを拒む多彩な魅力を持つ作家なので、止むを得ない結果ではある。以前からジョイスを熱心に推してこられた中野善夫氏が、特別企画の「作家別海外SF必読書ガイド」で解説してくれているのが救いであるが、もっと大きい扱いを受けて然るべき作家のはずだという思いも、どうしても拭いきれない。
 ホラー・ジャンルの視点から評価するならば、グレアム・ジョイスは現実が非現実に侵犯されるスリルを描くことにかけて、恐らく当代随一の実力を持つ作家だろう。彼の作品は純然たる超自然と心理的な解釈との間を揺れ動き、登場人物は自らの正気をとことん疑い続けることを強いられる。しかも、ヘンリー・ジェイムズやデ・ラ・メアらの朦朧法のホラーとは違って、ジョイスは物理的な証拠を平気で持ち込むので、混迷の度合いはより一層深い。例えばホイットリー・ストリーバーの『コミュニオン』のようなノンフィクションの怪異談に比肩する生々しい怖さが、ジョイスの作品にはある。
 また、怪奇小説は大好きだがホラーは気持ち悪いので読まないという中野善夫氏が推していることからも判るように、ジョイスは生理的な嫌悪感に立ち入ることがほとんどない。あくまで現実と非現実のせめぎ合いに焦点を定めているので、古典怪奇ファンにも安心して読めるはずだ。
 正直に告白すると、実は私は本書の他には少年の思春期の葛藤と妖精との遭遇を巧みに絡めた"The Tooth Fairy"[Amazon]しかジョイスの作品をちゃんと読んでいないのだが、この"The Tooth Fairy"には文字通り打ちのめされた。『鎮魂歌』より"The Tooth Fairy"の方が、超自然小説としては優れているのではないかと思っているほどなのだが、これが邦訳されるには、まず『鎮魂歌』が売れなければならない。皆さん、ぜひ買ってください!

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2005/02/18

購書備忘録2005その12

仕事の出先で立ち寄った新古書店で、下記の3冊を購入。

高橋義典監修・日本探検協会編著『驚異の地底王国シャンバラ』(1994,廣済堂ブックス)
 まあ書名の通りの新書オカルト本なわけだが、ブルワー・リットンに関する記述がけっこう多いようなので買ってみた。今読むとさすがに古めかしいが、ブルワー・リットンのオカルト小説は19世紀の超自然小説の一大転換点とも言うべきもので、その成立の背景に関心があるのだ。この際、虚像も含めてブルワー・リットン絡みの資料はとりあえず拾っていこうかと……オカルトって深入りすると泥沼なんだけどねえ。

スティーブン・カプラン『真実のバンパイア』(1996,廣済堂ブックス)
 これも廣済堂の新書。副題に「現代の吸血鬼たちの記録」とあって、吸血鬼というのはほんとのほんとに実在しているという調査報告である。被害者の体験談に留まらず、439歳の女吸血鬼との対話記録とか、訳者も含めて本気モード全開の模様。
 この本が出たころ、私はホラーに集中していてオカルト本はほとんど買わなかったのだけど、廣済堂はおいしいオカルト本を量産していたのだろうか?

仁賀克雄『ドラキュラ誕生』(1995,講談社現代新書)
 ドラキュラを中軸に、吸血鬼の起源となった伝承から様々なメディアへの浸透までを幅広く語ったもの。あくまで入門書なので、資料としてどうこうというより、著者の愛情溢れる語り口を楽しむべき本ですな。

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2005/02/12

購書備忘録2005その11

 bk1より、マーク・チャドボーン『フェアリー・フェラーの神技』、SFマガジン編集部編『SFが読みたい! 2005年版』が届く。

 マーク・チャドボーン『フェアリー・フェラーの神技』(バベル・プレス)[bk1][Amazon]は、2003年度英国幻想文学大賞短篇部門受賞の中篇。題名になっている「フェアリー・フェラーの神技」とは、リチャード・ダッドという実在した狂気の画家の作品だそうで、本書の表紙と口絵にもその絵が用いられている。何でもロック・グループのクイーンも、この絵からインスピレーションを受けた曲を発表しているのだとか。しかし、無知な私はリチャード・ダッドのことはもちろん知らなかったし、クイーンと聞いてもディノ・デ・ラウレンティスのスペオペ映画『フラッシュ・ゴードン』しか思い浮かばないのだった……。
 本書は、この絵に取り憑かれて人生を踏み外してしまった青年が、絵の謎を解くことで再起を図ろうとするが、かえって精神を病んでいって──というような話らしい。著者マーク・チャドボーンは、これまでにも何度か英国幻想文学大賞にノミネートされていながら、本書が初の邦訳になるとのこと。これまた不勉強で知りませんでした。

 SFマガジン編集部編『SFが読みたい! 2005年版』(早川書房)[bk1][Amazon]は、もちろんもともとSFに関心があるから買ったのだが、ホラーやファンタジーの出版についても貴重な情報源である。特に去年は、長く続いた時評の仕事がすっかり終わった反動で、古本ばっかり読んでいたので……と言いつつ、ホラーの総括にあれがないなあとか思ったり……。これは別項で書きますかね。

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2005/02/08

購書備忘録2005その10

 仕事の出先で新古書店に立ち寄り、山村正夫『死神の女』とブルフィンチ『ギリシャ・ローマ神話』を買った。

 山村正夫『死神の女』(ケイブンシャ文庫)は、全5篇を収めた怪奇短篇集。この本は間違いなく持っていない。だが、収録作が持っている本とだぶっているかどうかは判らなくて、それを確認しようと思ったら、結局は自室の本の山の中に散り散りに埋もれている山村正夫の本を掘り出して、突き合わせなくてはならない。せめてどの本を買ったかは判るようにしておきたいと思ったのが、本ブログを始めた動機のうちの一つでもあるのだけど、やっぱり整理整頓は必要ですね。

 ブルフィンチ『ギリシア・ローマ神話』(岩波文庫)[bk1][Amazon]は、実用的な手引きを期待してではなく、野上弥生子の美しい訳文に惹かれて買った。手引きとして見ると本書の記述は簡略すぎるので、もっと優れた本がいくらもあるだろう。副題に<付インド・北欧神話>とあって、申し訳程度であるがこれらに関する記述もある。原書は"The Age of Fable"という題で、同じく岩波文庫に入っている『中世騎士物語』と併せて1つの書物なのだという。

 続いて新刊書店にも寄って、特撮雑誌『宇宙船』3月号(朝日ソノラマ)を購入。この雑誌の中身についていちいち語るととえらい量になってしまうので、いちばん気になっている映画ローレライについてだけ。
『ローレライ』は初めて本格的にCG特撮を取り入れた国産戦争映画になるわけだが、劇場で予告編を見た限りでは、潜水艦の描写はなかなか良いと思ったのものの、米軍艦隊の質感の乏しさに激しく不安を感じたのである。そして今回、『宇宙船』に掲載されたスチール(49ページ上段)を見て、その不安はますます強くなった。これでは絵にしか見えないように思うのだが……。30年も前の『日本海大海戦』のミニチュア艦隊よりも、リアリティの面では後退してはいないか? 映画本編を見るまで断定は差し控えるが、期待が大きかっただけに反動が来そうで恐いのである。

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2005/02/04

『伝奇ノ匣8・ゴシック名訳集成 暴夜幻想譚』受贈書御礼

 株式会社学習研究社一般教養編集部より、東雅夫編『伝奇ノ匣8・ゴシック名訳集成 暴夜幻想譚』(学研M文庫)[bk1][Amazon]を頂戴する。ありがとうございました。実はbk1に予約済みなのだけど、それでもありがたいです。

 もともとコストパフォーマンスが異様に高い<伝奇ノ匣>シリーズであるが、中でも7巻以降の「ゴシック名訳集成」はずば抜けている。本書の場合だと、矢野目源一単独訳版『ヴァテック』や皆川正禧訳『シャグパットの毛剃』は、分量からいっても今後他のアンソロジーに採録されることはなかなか難しいと思われるし、古書で原本を入手しようとするとかなりの出費を強いられることだろう。

 何より、このような旧仮名遣いの古めかしい文章がぎっちりつまった本がどうやら商売として成り立っているらしいこと自体が、世の中まだまだ捨てたものではないという気持ちにさせるではないか。編者によると「部数はいつもより少なめ」とのことなので、興味がある方は早めに確保しておくことを強くお勧めする。

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2005/02/03

購書備忘録2005その9

 大国町近くの賃貸マンションに住む大学時代のサークルの後輩のところで、てっちりを食す集いがあった。難波が目と鼻の先なので、行きがけに時間の許す範囲で古書店を何軒か廻り、ロバート・ブロック『 気ちがい〔サイコ〕』、マレイ・ラインスター『異次元の彼方から』、サム・マーウィン・ジュニア『多元宇宙の家』、ノーヴェル・W・ペイジ『炎の塔の剣士』の4冊を購入。

 ロバート・ブロック『 気ちがい〔サイコ〕』(ハヤカワミステリ)は、もちろんあの『サイコ』のことで、ポケミス時代はこういう邦題だったのだ。初版は昭和35年だが、私が今回買ったのは昭和44年の第4刷。この本は何度も古書店で見掛けていたのだけど、今になってようやく、解説がハヤカワ文庫版とは違うことに気づいたので購入した。そのためだけに買ったのかと言われてしまいそうだが、別に惜しくはないような値付けだったのである。文庫版の解説は仁賀克雄だが、ポケミス版は都筑道夫が書いている。原書の初出である<イナー・サクタム・ミステリ>という叢書と著者ブロックの紹介を中心にしていて、モデルとなったエド・ゲイン事件についての言及は一切無い。たぶん、まだ知られてもいなかったのだろう。

 マレイ・ラインスター『異次元の彼方から』サム・マーウィン・ジュニア『多元宇宙の家』は、どちらもハヤカワSFシリーズの一冊。ハヤカワSFシリーズも安くなった。私が学生のころには1000円を超える値段を付けている店も多くてなかなか手が出しにくかったものだが、今では相場は半額以下ではないだろうか。いまだに高値を維持し続けているサンリオSF文庫も、いつか落ち着く日が来るだろうか? 『異次元の彼方から』は異次元から侵略してくる話で、『多元宇宙の家』は異次元へ入っていく話。別にそれを狙って買ったわけじゃないんだけど……。どちらも、私が生きている間には新版が出たりはしなさそうな本である。

 ノーヴェル・W・ペイジ『炎の塔の剣士』(ハヤカワSF文庫)は、コナン・タイプのマッチョな剣士プレスター・ジョンが紀元一世紀のユーラシアを放浪していくヒロイック・ファンタジー。主人公があまりに強すぎてバカバカしいとも聞くが(素手で虎を倒したりするとか)、さてどんなもんでしょうか。

自宅に帰ってから戦果を再確認していると、前所有者が栞代わりにしていたのだろうか、『異次元の彼方から』に1970年の日本万国博覧会の割引入場券が1枚挟まっていた。人類の進歩と調和──SFの古本を読むにはちょうどいいかも。

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2005/02/02

購書備忘録2005その8

 bk1より、マンリイ・ウェイド・ウェルマン『ルネサンスへ飛んだ男』と『決定版 全ゴジラ完全超百科』が届く。

 マンリイ・ウェイド・ウェルマン『ルネサンスへ飛んだ男』(扶桑社ミステリー文庫)[bk1][Amazon]は、1940年に発表されたタイム・トラベル物のSF小説。マンリイ・ウェイド・ウェルマンというと、日本では<銀のギターのジョン>シリーズやウィアード・テイルズ系の怪奇短篇などが知られている程度で、それほど人気のある作家でもない。今さらどうして彼の60年以上も前のSF長篇が邦訳されるのだろうと、興味津々で訳者野村芳夫のあとがきを読んでびっくり。優れた作品なのに日本ではほとんど知られてもいないから、邦訳しただけだというのである。
 ──いや、当たり前の話ではあるのだ。だが、その当たり前のことを通すのが、現在の海外娯楽小説の出版ではどれほど難しいことか。しかも、初出を底本にしつつその後の版の改善箇所を取り入れて翻訳することにより、世界初の決定版というべきテキストに仕上げ、大幅に改訂されたためにどうしても本文に盛り込めない箇所は、巻末に付録として載せているという豪華仕様。この心意気を応援せずにどうしますか。たった762円+税の投資なんぞ安いものだ。皆さん、買いましょう!

『決定版 全ゴジラ完全超百科』(講談社テレビマガジンデラックス)[bk1][Amazon]は、1954年の『ゴジラ』から最新作『ゴジラ ファイナル・ウォーズ』まですべての東宝特撮全作品の怪獣・怪人・メカを紹介した百科。子供向きながら、『ガス人間第1号』とか『さよならジュピター』みたいな映画まで網羅してます。約120ページでオールカラー。ネットでけっこういいという評判を聞いて買ったんだけど、私のような大きなお友達にはやや薄味だったなあ。三男の啓蒙用になりそう。
 とはいえ、パラパラめくって東宝特撮50年の歴史をあらためて振り返ると、作りも作ったりという感慨を抱かずにいられない。何しろ、『メカゴジラの逆襲』まででようやく本書の半分程度なのである。ゴジラ・シリーズの再開からすでに20年を越えているのだから、東宝特撮というと即、本多猪四郎・円谷英二のコンビを基準にしてしまうのは、もう通用しない時代になってるのかもなあ。

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2005/02/01

当ブログについて

 当ブログを公開してから、ほぼ1ヶ月が経ちました。これまではごく内輪にしか知らせておらず、もう少し内容を充実してから告知していこうかと考えていたのですが、(゚(○○)゚) プヒプヒ氏の「幻想的アンテナ」に思いがけず加えていただいたりしたため、存在がある程度広まってしまったようです。ありがたいことです。

 内容も貧弱ですが、ブログというものの仕組みがまだよく解っていないので、体裁が読みづらいと感じられることが多かろうと思います(そもそもブログという形式が、書き手が情報を蓄積するには便利なものの、受け手が見るには不便なのではないかとも思うのですけど……)。徐々に改善していきたいと考えておりますので、ご容赦ください。

 また、一応トラックバックも可能にはしていますが、今のところ、誤って下書きを公開してしまったり日付を間違ったりで頻繁に訂正しておりますので、私が操作に慣れるまでは、いきなりリンク切れになる可能性が多分にあります。ご注意ください。

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購書備忘録2005その7

 持病の薬をもらうためにかかりつけの総合病院へ。読みかけの倉阪鬼一郎『冥い天使のための音楽』(原書房)[bk1][Amazon]を持参し、待ち時間中に読了した。「旋律」と「戦慄」を掛けているかのような帯の惹句に、例によって笑いと狂気が入り交じるアクロバティックな仕掛け満載かと思い込んでいたら、謎解きが主体ではあるものの、意外や雰囲気を重視した味わいだった。本格ミステリは読み付けないので本気で判らないのだが、登場人物と読者の情報量に意図的に差をつけているのは、フェアとされる範疇なのだろうか? ホラー的には、こういうのもありだと思うんですが。

 帰りに寄った書店で、『PANZER』2月号と『SFマガジン』3月号を買った。

 戦車雑誌『PANZER』(アルゴノート社)は、記事によって買ったり買わなかったりする。今回のお目当ては特集「MBT70/Kpz.70の再評価」。MBT70/Kpz.70は、1960年代にアメリカと西独が共同開発しようとした戦車である。アメリカ側の呼称がMBT70で、西独はKpz.70。ミサイルランチャー兼用の主砲を始め、自動装填装置や油気圧サスペンション、操縦席が砲塔内にある特異な乗員配置等々、当時の最新技術を贅沢に盛り込んだ戦車だったが、両国の思惑がすれ違って仕様が統一できなかった上に、金は嵩むわ性能は安定しないわで、70年代初めには計画が頓挫してしまった。外見はまさしくパットン・シリーズとM1エイブラムズを繋ぐミッシング・リンクで面白いのだが、模型化とかはまずあり得ないだろうなあ。
 ちなみに、平凡社の小項目大百科『マイペディア』の戦車の項には、いまだに「主兵装もミサイル化の傾向にある」などと書いてあるが、それはMBT70/Kpz.70のころの話であって、30年ほど前にミサイルは見放されているのである。こういう記述が放置されているのだから、『マイペディア』の軍事関連の項目はあてにしない方がいいだろう。

『SFマガジン』(早川書房)は、特集に興味が無くてもそれ以外の記事やコラムが目当てで、いつからか毎号買い続けている。今月号は「SF SCANNER」欄に『ルーフ・ワールド』や『スパンキイ』の著者クリトファー・ファウラーの新作長篇『フル・ダーク・ハウス』が紹介されている。ミステリのシリーズ物なのに冒頭でホームズ役が爆死してしまうのだとかで、相変わらず才気煥発な模様。これは邦訳されそうな気がしますな。ホラー・ファンとしては、"City Jitters"などの都市生活者の不安を主題にした短篇集の方を、早く邦訳して欲しいのだが。

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